こんにちは。メンタルトレーナー&心理カウンセラーの吉田こうじです。大人になってもあなたを苦しめる『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』を連載しています。
本記事内に登場する「毒親」とは
子どもに対する拒絶、侮蔑、無視、過干渉、虐待などによって、子どもの心身に罪悪感、劣等感、不安感。過剰な義務感、不足・欠乏感、羞恥心、無価値感などのネガティブな思考や感情を継続かつ執拗に植え付け、それによって子どもを「自分の所有物」かのようにコントロールする親のこと。また、「親」とは実の親のみならず、「親代わり」の身近な人も含めます。
前回、前々回と、執拗な過干渉などの悩ましい家庭環境によって、子どもにもたらされる心理的な悪影響を実際のケースを交えてお話ししました。今回も悩ましい家庭環境のお話です。
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秘密を強いられる子
アルコール中毒、ギャンブル中毒、借金中毒など、なんらかの依存、中毒状態の親がいる家庭や、暴力的な親がいる家庭の場合、その子どもは「世間には絶対に知られてはいけない、家族だけの隠しごと」として、幼いころから親に家族の秘密を隠蔽することを強要されたり、ときには子ども自らが心の中で「存在しないこと」として事実を封印したりすることは少なくありません。というのも、そうしないと家族という唯一の居場所が崩壊してしまうからです。
しかし、そういう家庭はそもそも、嘘(裏の顔と表の顔)、理不尽な命令、言い訳、秘密、我慢、責任転嫁などが、まるで息を吐くかのように当たり前に飛び交い、形としては家族という形態はあるものの、その内情は崩壊しているといってもいいでしょう。
そうした崩壊家族で育った子どもは、深刻な情緒的ダメージを受けてしまいます。
ここで、クライアントのDさん(30代・女性)のケースを紹介します。
アルコール中毒の父親に支配された家
Dさんが子どものころ、お父さんは仕事から帰宅するとすぐ、台所から3L入りの大きなウィスキーボトルを持ってきて、リビングのテーブルの上に「ドン」と置くと、そのままストレートでコップに注ぎ、テレビを睨みつけながら飲んでいたそうです。
家族が食事をしている間も、お父さんはただただお酒を飲んでいる。その間、家族はただ黙って何ごとも起きないことを心の中で祈るばかり…。というのも、ちょっとでも機嫌が悪くなると、途端に騒いだり物を投げたり叩いたりと手がつけられなくなったから。
酔っ払うと、部屋に戻って寝てしまうこともあれば、そのままリビングに居座り、延々と子どもに説教をしたり、妻を罵倒したり…。一番嫌だったことは、家族の誰も、そんなお父さんに「やめてほしい」と注意をしなかったこと。
でもDさんは、高校生になるまで、どこの家庭も実はこういう悩ましい秘密を抱えているものだと思っていたそうです。
その一方でDさんは、物心ついたころには、父親の飲酒や暴君的な振る舞いについては、家族のなかの「秘事」だという認識をしていました。これは、幼稚園に入るころに「家のことを決して外では話さないように」と母親から厳しく念を押されていたから…。
そうして気づけば家族みんなが、近所の人や先生などに対し、「うちの家族にはなんの問題もないし、楽しい家族だ」というふうに振る舞っていたそうです。
こんなふうにネガティブな秘密を共有し、いまにも崩壊しそうな家族間の絆をなんとか維持しようと努力することが、“毒親”をさらに増長させてしまっていることは少なくないのですが、「ネガティブな秘密」を維持し続ける理由には、共通する3つの特徴があります。