【触れなば落ちん風情】
男が誘えばすぐに応じそうな様。その姿が色っぽい様子。
これは、ジェンダーギャップについての記事を書こうと性差別的な言葉を調べているうちに見つけたことわざだ。
「お願いだよ〜。もう一軒!終電で帰るからさ」「もう、しょうがないわねえ。ちょっとだけよ」この男は絶対に終電で帰らないし、そのまま女と朝まで過ごそうとしている。そしてこの女はそれをわかっている。
こんなふうに困り顔で少し恥じらいを見せながら、わからないふりをして男を懐に招く。そんな女がいい女である!
と、少し度の過ぎたたとえだが、「ちょっと触っただけで落ちてくれる女性=色っぽい」などという概念をよしとする言葉がことわざとして存在する国、日本。
「いや、これはむかしのことわざでそんなことが通用する現代ではない」と言いたいところだが、どうやらこのことわざが作られた時代とそう変わらない価値観を持っている男性はいまでも一定数存在し、日本にはいまだに男女不平等だと感じている人がたくさんいる。
2021年3月31日に世界経済フォーラムによって世界156カ国の男女格差の度合いを示したジェンダーギャップ指数(Gender Gap Index: GGI)が発表され、日本はそのなかで121位であることが報告された。
経済・政治・教育・医療の4つの分野でそれぞれ117位・147位・92位・65位、特に女性の政治参加の点において順位を下げる結果となった。
このように男女格差を数値で表され世界と比べられると、当たり前だと思うようになってしまったジェンダーギャップの小さなモヤモヤに意識が向くようになる。
生活圏外の他人にだから話せること。お客様が感じるジェンダーギャップ
私は都内のリラクゼーションサロンでセラピストとして働いている。お客様は男女関係なくご来店され、日々の身体の疲れを癒したり、美しくなりたいという要望の手助けをしたりしている。
心と身体は表裏一体。身体を触っていると疲れや老廃物が排出されていくのと同時に、その人の些細なストレスから大きな悩みまでも吐露される。
30代後半の女性。不妊治療中であり、さまざまな方法で自分の身体を労っていた。彼女が働いていたのは男性の多い業界で、女性は彼女と先輩のひとりだけだったという。
彼女は、「女性だから」という理由でやりたい仕事ができないのは嫌だと思い、入社時から自分のキャパシティを超えるほどの仕事量と労働時間をこなしたらしい。
そんな彼女は唯一同性であるその先輩に「この仕事をするなら妊娠は諦めろ」と言われた。結婚という女性ならではの人生のイベントと仕事を両立するには困難であるからだ。
彼女はその先輩の言葉を受け止め、死に物狂いで働いた。そしてそんな過酷な仕事が当たり前となった30代前半になったころ、愛する人と出会い、彼女は「この人と結婚して2人の子どもがほしい」と思うようになったそうだ。
けれど、結婚後子どもを授かることはなかなかできなかった。身体が限界を越え、悲鳴をあげていたからだ。
彼女はいま妊活のために、自分の身体と相談しながら働ける職場に転職した。前の仕事に未練はないと言いながらも、まだあのころの仕事がしたいという気持ちも残っているという。