ストレート(異性愛者)層の現状
自民党が「まずは理解の促進を」と考える主たるターゲット層を、LGBT当事者ではないストレート(異性愛者)層であると仮定して、その層の現状も見てみましょう。
2020年の12月、電通でダイバーシティー&インクルージョン領域の調査と分析などを担当するチームが、全国20〜59歳の計6万人を対象としたセクシャルマイノリティについてのLGBTQ+調査2020を行いました。対象のなかには当事者も含んでいて(8.9%)、ストレート層は5,685人でした。
そのなかでLGBTQ+に対してどういう考え方を持っているかを分析し、チームは対象者を6つのクラスターに分類しました。
- 課題意識が高く積極的にサポートする姿勢がある「アクティブサポーター層」(29.4%)
- 知識は少ないが課題意識や配慮意識の高い「天然フレンドリー層」(9.2%)
- 知識はあるけれど課題感を覚えるきっかけがない「知識ある他人事層」(34.1%)
- 誤解が多く一見批判的だが人権意識はある「誤解流され層」(16.2%)
- 積極的に批判はしないが関わることを避ける「敬遠回避層」(5.4%)
- 生理的嫌悪、社会への影響懸念が著しく高い「批判アンチ層」(5.7%)
当事者としては、1、2の層が思っていた以上に多かったことを喜ばしく思うものの、4〜6の層が3割弱もいることが悲しくもありました。
しかしここで注目すべきは、3の「知識ある他人事層」。この層だけで、先ほどの4〜6の層の層よりも多いのです。この層へどうアプローチするかで、自民党の言う「理解促進」に繋がるか否かが決まってくるのではないでしょうか。
アンケート調査によると、この層は知識があるため、知識による啓発よりも自分事にさせることがポイントのように感じます。
法案、法整備の必要性
ここからは上記を前提に、僕の考える今後の法整備の必要性を話しましょう。
まず差別の禁止については「いのちを守る」自死の防止に繋がると考えます。年齢問わず当事者というだけでいじめを受け、死へと追い詰められたり、もしくは当事者ということが原因で就職時に不採用になったり、在職中に不当に解雇され生活に困ったり、職場でいじめられうつなどを発症し働けない状況になったりしているかたが今もいます。
少々強い言い方になってしまいますが、これは人間の尊厳と、生死に繋がる問題になると思うのです。
いじめや差別を避けるため、LGBTQ当事者であることをカムアウトをする人は少なく、その分セクシャルマイノリティの問題は可視化されにくく把握が難しいのが現状です。
たとえ同性婚などの制度ができても、周囲の環境に差別やいじめが起こり得る状況ならば、制度を利用しない・できないという人も出てくるのではないでしょうか。
それらを防ぐためには、たしかに全体の理解促進が必要です。しかし即効性があるとは現状言いづらく、いまこの瞬間辛い状況に立っている人の救いにはなりません。
理解を深めることと同時に、社会のシステムとして差別を禁止することで、「なぜ禁止なのか」を考える人が増えれば、訴訟になる前に考え方や認識が変わって、ストレート層も自分事にできるようになってくるのではないかと、僕は考えます。
訴訟がしたいのではなく、あくまで禁止をすることでいじめや差別の抑止力になり、社会全体で考えるきっかけになってほしいのです。