「からかっていただけ」は通じない(女性/38歳/公務員)
「元夫とは社内恋愛で結婚し、自分では順調な結婚生活だと思っていました。
インドア派で社交的とはいえない元夫は、反対に外出が好きで友達も多い私に憧れのような気持ちを持っていた、と付き合っているときに話していたのを覚えています。
不器用でいろいろと失敗も多い元夫を、私はいつも『本当にダメね』『あなたじゃ無理よね』とからかっていて、それで笑い合うのを楽しんでいました。
元夫は困った顔をしながらも黙って付き合ってくれていて、これもコミュニケーションだと勝手に思い込んでいて。
子どもが産まれてからは、息子と一緒に『使えないパパだよね』と口にしていて、いま思えば本当に最低だったなと思います。
あるとき、息子と仲のいいお友達のご夫婦とバーベキューをすることになり、準備をしていたら着火剤を忘れてきたことがわかり、いつもの癖で『もう、本当にあなたは役立たずなんだから』と言ってしまいました。
周りにはお友達のご夫婦もいて、一瞬さっと空気が変わったのを感じました。
失言だったと気が付き慌てて『何か代わりになるものはないかしら』と言ったのですが、ご夫婦の気まずそうな表情が忘れられません。
元夫はいつものように黙ったままでしたが、険しい顔で私との会話を避けるので焦りました。
このときにすぐ元夫に謝ればよかったのだといまは思うのですが、当時は『いつものことだし』とまだ軽く考えていて、軽口で謝罪なんてしたこともなかったため、そのままでバーベキューを進めてしまいました。
思い出せばこの日から元夫の態度が変わり、冗談を言っても笑わないし返事もしないし、息子が夫を馬鹿にするような発言をすると『そんなことを言うな』と怒りを見せるようになって。
元夫との間に溝ができたのは感じたけれど、心のどこかで『いまさら怒るなんて、器の小さい男』と思っていましたね…。
離婚を切り出されたのは1年後で、そのころはもう仮面夫婦状態で、やっぱりかという感じでした。
『君のしていることはモラハラだよ。せめて謝ってくれたらよかったけれど』と言われたときは、『じゃああなたも言い返しなさいよ』とこれまでのイライラをぶつけてしまって、最後まで後味の悪い終わりでした。
親権を放棄したので子どもは私が引き取り、いまはふたり暮らしをしています。
元夫は養育費を毎月きちんと払い面会交流もしており、離婚してから明らかに明るくなった様子を息子から聞くと、複雑な気持ちになります。
夫から言われた『君のしていることはモラハラだよ』の言葉はいまも残っており、からかっていただけで済ませたいのは私の身勝手だったのだなと、実感しています」(女性/38歳/公務員)
冗談や軽口は、相手の自尊心を傷つけない限りはたしかにコミュニケーションの手段になりますが、度が過ぎればモラルハラスメントです。
「相手が嫌と言わなかったからモラハラじゃない」と自分の言動を正当化する人がいますが、子どもと一緒になって「ダメ」を連発される配偶者の気持ちを想像したことがあるでしょうか。
相手が嫌な気持ちになっている、と気がついても謝罪をしないことが、軽んじている証拠であり信頼も愛情も失う十分な理由。
こちらのケースでは、離婚後に元夫と顔を合わせる機会がないまま、面会交流を終えた子どもから情報が入ることでかえって当時の自分の至らなさが繰り返される、と妻は話します。
それが自分のしてきたモラルハラスメントの結末であり、受け入れるしかないのも現実です。
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