自分のやっていることがモラルハラスメントなのだ、と気がつく人は少なく、配偶者や恋人が去ってから初めて「そうだったのか」と知るケースは多いもの。
改めて過去を振り返ると、自分がいかにパートナーを傷つけてきたか、パートナーがどれほどつらい思いをしたかを実感してしまい、落ち込む人もいます。
パートナーから離婚や別居を切り出され、自分がモラハラ配偶者だったのだと気がついた人たちの気持ちについて、ご紹介します。
妻の努力をまったく見ずに…(男性/40歳/営業)
「長女を出産してから、妻は在宅でできる仕事をとイラストレーターになるためにがんばっていました。
最初は月収数万円程度だったのが、一年もすると扶養を外れるくらいの額になり驚きましたが、すごいなと思うのが何だか癪に障り、一度も言いませんでしたね。
『どれだけがんばっても俺くらいの収入は無理だろう』とどこかで考えていて、在宅なのだから家事も育児もできるはずといままで通りに動くことを当たり前にしていました。
妻の様子が変わってきたのは2年目、長女を保育園に預けてさらに収入が上がってきてからで、『仕事をしたいから代わりに洗濯をしてほしい』『平日できなかったぶん休日に仕事をしたいから、娘をお願い』と俺に頼むことが増えました。
妻の描いたイラストが載った記事をインターネットで見ていた俺は、毎日楽しそうにパソコンに向かう妻を見ると『俺より充実した人生を送っている』と感じてしまい、どこか悔しくて。
何か頼まれても『家事もお前の仕事だろう』『家のことより仕事を優先するのか』と嫌味を返し、妻が苦しそうな表情をするのを見て溜飲を下げていました。
いま思うと本当に最低ですが、妻は睡眠時間を削って仕事をしていて、休日の朝に寝ているときは『ダラダラするな』と娘をけしかけて無理やり起こしていましたね…。
妻はいつの間にか収入を言わなくなり、俺と目を合わせて会話することがなくなり、嫌味を言っても無視されることが増えて。
娘にしか笑顔を向けない妻を見てもまだ『調子に乗りやがって』と俺は思っていて、ある日突然離婚届を突きつけられたときに大きなショックを受けました。
『あなたみたいな人間とはこの先やっていけない。母親をけなす父親なんて、あの子にとってもよくない』ときっぱり口にする妻は見たこともないほど冷たい表情をしていて、やっと自分のしてきたことがどれほど妻を苦しめていたか、気がつきました。
妻は淡々と自分の状況について話し、衝撃だったのは年収が俺と変わらない額だったことです。
在宅でここまで稼ぐのがどれほど大変だったか、『あなたと離婚するためにがんばっていたの』と言った妻の言葉はいまでも覚えています。
俺は離婚したくなかったので反対したのですが、両親にも話してあるという妻は娘を連れて家を出ていきました。
いまは別居して半年で、何とか戻ってきてほしいと思っています。
そのためには謝らないと、と思うのですが、妻は電話に出ず家に行っても向こうの両親が会わせてくれないため、話し合いができません。
この先どうすればいいのか、毎日ひとりの部屋でぼんやりと考えています」(男性/40歳/営業)
妻の状態が気に食わない夫がモラルハラスメントに走るケースは本当に多く、配偶者をどうしても「自分の下」に置いておかないと満足できない心の狭さを感じます。
妻であっても自分とは違う人間であり、人生を楽しむ権利は平等にあると思っても、「対等」になるとプライドがネガティブに刺激されるのですね。
そんな態度が妻に別の方向で努力を促すことを、離婚を切り出されるまで気づかないのがモラハラ夫の現実です。
心から反省しておりふたたび同居を望むのであれば、信頼してもらえるよう今度は自分が努力することになります。
そこにかける時間が、妻の苦しみを癒やすひとつにもなるのではないでしょうか。