6歳差の姉弟を育てるママライター、EMIです。
アルツハイマー型認知症の母との過ごし方についてコラムを執筆しています。
母がアルツハイマー型認知症だとわかってから5年が経ち、現在は要介護2。高齢者住宅に入居し、介護サービスを受けながら生活をしています。
現在、母は週に3回デイサービスを利用しています。以前は、デイサービスに行きたがらないことが頻繁にあり、大変な思いをしていました。
認知症の人がデイサービスを拒否することはよくあることですが、家族としては「できることならデイサービスに行ってほしい」「介護する側も息抜きしたい」というのが本音です。
今回は、認知症の人がデイサービスに行きたがらない原因や対応について、私の経験もふまえてお伝えします。
- 母と私のこれまで
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デイサービスの拒否はなぜ起こる?その原因と対応策
認知症の人にとってデイサービスを利用することは、ご本人にとって社会とのつながりを保ち、生活を豊かにするきっかけになります。
また、認知症の人がいろんな人と会話をしてコミュニケーションを深めることは、脳のリハビリにもよいとされています。
しかし、認知症の人にとって、新しい環境になじむのはとても大変なこと。
ご本人がよいと思って決めた場所でも、最初はなじめずに拒否したり、慣れてきて楽しく通うようになったとしても、そこにたどり着くまでには、とても時間がかかることが多いのです。
認知症の方がデイサービスに行きたがらない理由は、人によってさまざまだと思いますが、次のようなことが原因ではないかと考えられます。
認知症による記憶障害、認識力の低下
認知症の人がデイサービスに行きたがらない原因の一つとして、記憶障害や認識力の低下が考えられます。
たとえ本人に適した場所であっても、どんな場所だったか忘れてしまったり、誤解や行き違いによる被害妄想をいだくことは認知症の症状としてよくあることです。
そのような負の感情は、認知症の人にとって記憶に残りやすいため、なじんだはずのデイサービスを拒否することもあるのです。
私の母も「デイサービスに慣れてきたかな…」と思ったら、誤った認識や被害妄想から、なじんだはずのデイサービスに行きたがらなくなることが頻繁にありました。
現在母が通っているデイサービスは、事前に見学へ行き、素敵な外観と食事内容が気に入って本人が通うと決めました。
しかし、母は、記憶障害によりそのことをすっかり忘れているのです。
また、以前通っていたデイサービスと勘違いして「あのデイサービスは男性が多くて、話が合う人がいないから行きたくない」と拒否することがありました。
以前通っていたデイサービスは男性が多いところだったので、そのときの嫌な記憶がよみがえったのでしょう。
このような状況で私が行った対策は、ケアマネージャーを通して事業所に相談することです。事業所に相談することで、デイサービスでの母の座席を考慮してもらうことができました。
食事や工作をする際に母の両隣を女性にしてもらうことで、「男性が多くて話が合う人がいない」という理由でデイサービスを拒否することは少なくなったように思います。
そして最近では、記憶が曖昧ながらも顔なじみの人ができたみたいで、以前よりも楽しく過ごせているように感じます。
デイサービスへの外出拒否があることを事業所に相談することは、家族にとって気が引けてしまうかもしれません。
もし直接伝えることが難しかったら、ケアマネージャーを通してでも相談してみるのがよいでしょう。デイサービスでの本人の過ごし方を工夫してくれるかもしれません。
外出する意欲がわかない
認知症が進行すると、行動を起こすことに以前よりもエネルギーが必要になり、何事もおっくうに感じてしまうことがよくあります。
外出の支度や準備が面倒だったり、家族以外の人に会うこと自体をおっくうに感じてしまうこともあるのです。
私の母にも同じような症状があります。デイサービスの支度が面倒、出かける身支度をするのが面倒、人と話すのが面倒…何をするのもおっくうに感じている状態です。
私は、母に少しでも外出する意欲をもってもらうためには、デイサービスへ行くことが楽しく、自分にとって意義のあることだと感じてもらうことが大切なのではないかと考えました。
そこで、少しでもデイサービスへ行く意欲をもってもらうために私がしたことは、母がデイサービスで作った作品などを本人の目のつくところに飾り、それを話題にすることです。
母の入居する高齢者住宅を訪れたときには、「この前のデイサービスでは何を作ったの?」と必ずデイサービスの話をするようにします。
そして、母が作った作品をみながら「この作品素敵だね。また違うものを作って見せてよ」と子どもと一緒に言うと、母は孫に褒められたのが嬉しかったのか、「また作品作って見せてあげるね」と少しやる気をみせてくれるのです。
また、母は押し花講師をしていた経験があるので、「今度デイサービスでも押し花教えてみたらどう?みんな興味を持つと思うよ!」など…。
現実的には多少無理なこともあるかもしれませんが、少しでも本人のやる気を引き出すような話をしています。
また、母の通うデイサービスは食事にこだわっていて、毎回レシピ付きのメニューを配布してくれます。
母はデイサービスでの食事を楽しみにしていて、このメニュー表を大切に保管しているのです。
そして「あなたの料理の参考になると思って捨てずにとっておいたよ」と私に見せてくれるときがあります。
最近では、メニュー表のことを忘れてしまうときもありますが、デイサービスでの食事を話題にだすことで、母は「ここのデイサービスは食事はおいしいから行くのが楽しみなの!」とデイサービスへ行く楽しみを思い出すのです。
このように、デイサービスでの出来事を話題にして本人にとっての楽しみを見出すことは、外出する意欲をもつきっかけになるのではないでしょうか。