「モンスターママ」のこだわりが暴走
しかし、徐々にベテランママ・イトウさんのこだわりが炸裂し始めます。
「おたよりの内容については役員同士で話し合って決めるのですが、せっかく作るのだから、子どもも保護者も読んでもらえるような子どもに聞くアンケートや人気の給食のレシピなどを載せたいよねと話し合っていました。ですがイトウさんが『そんなのはダメよ!』とバッサリ却下してくるんです」
なんでも、イトウさんごひいきの保健の先生がいて、その先生に執筆をお願いすべきだと主張。どうやら以前もその先生にお願いしていたとのこと。
そしてその保健の先生も、相当なクセの強い先生だったそうです。
「その保健の先生は、熱心ではあるものの活動の内容に疑問を感じていました。『学校でのケガをゼロにしよう』という目標を大々的にかかげて活動していますが、そのために廊下を絶対に走らないよう子ども同士を監視させる通報制度を設けていて、まるでスパイのようだなと好きになれませんでした」
ほかのママもその先生の執筆にいい顔はせず、もう少し楽しいものにしようと提案しましたが、イトウさんは断固拒否。「以前もわたしがやったときはこうしてるから!」と一点張りで譲りません。
仕方なくおたよりの内容は、ほとんどがケガゼロ活動を熱く語った保健の先生の内容になりました。
せっかくPTA活動をするなら楽しくと考えていたアサミさんはガッカリしましたが、次の親子イベントでは何か楽しいことができたらいいなと思っていました。
しかし親子イベントでも同じようなことが…。アサミさんたちは過去に開催した事例を見ながら相談し、シンプルでも楽しめるハンカチ落としや親子ドッヂボールなどの案が出ましたが、イトウさんはこれまた却下。
「お便りでケガゼロを掲げているのに、走り回るものはよくないと言われました。体育の授業もあるし、休み時間に校庭で走ることもあるのに…。親子イベントでケガが出ては、保健の先生に言い訳ができないと思っているようです。あれこれダメ出しされ、結局イトウさんの発案で親子なぞなぞ大会になりました。ハッキリ言ってつまらなかったです」
イトウさんは自分の思い通りにやれてご満悦だったようですが、アサミさんをはじめほかのママはイトウさんの強引さにウンザリしていました。
ラストにぶっこむ「まさかの裏切り」
メインの活動も終わったので、やっと役員が終わると思っていたところ、またイトウさんから連絡がありました。
最後の参観日にサプライズで子どもたちの歌をプレゼントし、PTA役員から自腹で簡単なプレゼントをしようというのです。
先生は喜ぶかもしれませんが、ほかのクラスはやっていないのでそこまでの必要を感じなかったアサミさんたち。けれどイトウさんが昔やって、先生に感謝されたということで、オリジナルサプライズは絶対にやると言って引き下がりません。
反対の余地もなく、仕方なくやることにしました。
「しかも最悪なことに、イトウさんのプレゼント案がダサいパッチワークの手作り写真立て。服装などからも何となく感じてはいましたが、イトウさんのセンスのなさに絶句しました。これにお金を出すのはさすがに嫌だと、ほかのママたちと話し合って、プレゼントだけは自分たちが購入しますと押し切り、オシャレなフォトフレームを購入しました」
最後の抵抗のつもりで押し切ったプレゼント。やっと納得のいくことができたと喜んでいたのもつかの間、イトウさんの地雷を思い切り踏んでしまったようで…。
それ以来、なぜかイトウさんの態度が硬化したのです。明らかに気に入らない様子で投げやり。「みんなで決めればいいんじゃない?」と途中まで仕切っていたこともやらない様子で、そもそもやる必要のないイトウさん発案のイベントを自分たちがかぶることになってしまいました。
仕方なくみんなで歌う曲を決めていたところ、イトウさんが「その曲ならカラオケCDを持っているから当日持っていく」と言ってくれました。
機嫌が直ったのかと思っていたのですが、当日、なんとイトウさんは「そのCDを忘れてしまったから、持ってきたほかの曲でやりたい」と言い出しました。
みんなが知らないであろう曲だったため「困る」とざわついていると、ほかのママが機転をきかせて「音楽の先生に借りられるかも!」と借りてきてくれ、無事予定通りの曲を先生にプレゼントすることができたそう。
「イトウさんがなぜCDを忘れてほかの曲にしようとしたのか不思議だったのですが、あとから理由がわかりました。イトウさんの子どもが自分はその曲を練習していたと自慢していたようで、なんとほかの子が知らない曲を自分の子どもに仕込んで、自分の子だけ上手に歌わせるためだけにCDを忘れたようなのです。必要のないイベントは、自分と自分の子どもを目立たせるための策だったということですよね。本当に怒りで震えました」
アサミさんは、以前「同じ学年にモンスターママがいる」と聞いたことがあったそうですが、何を隠そうこのイトウさんがそのモンスターママだったと判明。
役員をやるということは、モンスターママ・イトウさんとのお付き合いまでオマケについてくる…それを知る人たちは絶対にやりたくないという意志を固く、心を閉ざしていたのだそうです。
沈黙に耐え切れないよい人ほどPTAの犠牲者になってしまうこの慣習、どうにかならないものかとアサミさんはため息をつきます。
「やっていることが、本当に子どもたちを支えているのかわからない内容なので、なおさらやりたくないと思ってしまいます。誰が読むのかわからないおたよりの作成や、ダメ出しだらけのレクリエーション。仕切りたがるモンスターママにもうんざりで、もう二度とやりたくないです」
最近はPTAをなくす学校が出てきたり、変化している部分もあるようですが、まだまだ従来の慣習にならう部分が多い模様。
本来なら子どものためにあるはずのPTAが、ママ・パパたちの憂うつの種になっているのなら、あるべき姿を見直すべきかもしれませんね。
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