救世主、ポムポムプリン
僕の母は、小学校にあがる僕の文房具をハローキティでひと揃えにするほど、昔からハローキティが大好きでした。
たしかに「ハローキティは可愛い」と当時から思ってはいましたが、持ち物にしたいかといえば話は別。女の子の持ち物の象徴のように感じていたため、僕の好みではありません。
「シンカンセン」などの男児向けのサンリオキャラクターのものをねだったこともありましたが、やはり「男の子のものだから」とやんわり断られてしまう。なので、そのころの僕は「サンリオのキャラクターは、僕向けではない」と思っていました。
それでもクラスメイトや周囲の友だちが女の子ならハローキティやマイメロディを、男の子ならばシンカンセンやバッドばつ丸のグッズを「好きなもの」として自分の持ち物にしているのを見ると、羨ましく思っていました。
そんななか、1996年にあるキャラクターがサンリオからデビューしたのです。それが、「ポムポムプリン」。
それまで僕向けではないと思っていたサンリオのことを好きになったきっかけは、このポムポムプリンでした。
ゴールデンレトリバーの男の子という設定で、茶色のベレー帽を被った黄色くて丸い体のフォルムがとても可愛いキャラクターです。
可愛い見た目をしているのに、性別が男の子という点に当時雷に打たれたような衝撃を受けました。
これぞ僕が求めていたキャラクター。しかも誕生日が4月16日と僕の誕生日の1日違い(僕の誕生日は4月17日)なのもとても嬉しくて。
しかもポムポムプリンなら、母も「男の子のものだから」と断ることなく文具などのグッズを買ってくれました。
メモ帳や下敷き、プールの授業で使うボタン付きのタオルなど、僕の持ち物にポムポムプリンはどんどん増えていきました。
女の子のものが苦手も持てるサンリオキャラクターの登場で、初めて周りの女の子の友だちと一緒に「サンリオが好き!」と言えるようになりました。
小さなことかもしれませんが、周りと同じものに「好き」を向けることができるということは、「自分はほかの人とは違うのかもしれない」と感じていた僕にとってとても嬉しいことでした。
ポムポムプリンは、いまでもサンリオのキャラクターで一番好きなキャラクターです。
性別問わず、色々なものに触れて好きになっていってほしい
幼少期から心の性別と持って生まれた身体の性に差があるように感じる、性別違和を感じながらも、今回お話したような性別問わず楽しめるキャラクターや物語と出会えたことはとても幸せなことで、とても愛しい思い出です。
ポムポムプリンの登場と同じ時期に社会現象になった、『ポケットモンスター赤・緑』が大ヒットしたことで、それまでどこか「男の子のもの」だったゲームを「女の子も遊ぶもの」に。僕も、周りの女の子の友だちや従兄たちとこぞってゲームを楽しみました。『たまごっち』も、男女問わず手にした思い出深いゲームです。
こうして性別問わず好きになれるものも多く登場してきた時代でもあった一方で、僕が「男の子のもの」を買ってもらえなかったように、「セーラームーンを男の子が見ていると周囲にからかわれる」といったことも珍しくありませんでました。
本当はこれまで「女の子のもの」と思われていたものも、「男の子のもの」と思われていたものも、性別問わず楽しんでよい「おもしろくて」、「すてきなもの」。女の子じゃないから、男の子じゃないから好きになってはいけないなんてないはずです。
これまで「女の子のもの」「男の子のもの」「男女問わず楽しめるもの」とされてきたものの要素やデザインはそのままに、垣根だけなくしてしまえば、どんな子どもたちも好きなものを選べるようになるのではないでしょうか。
これからの子どもたちには、そうやって性別問わず色々なものに触れて好きになっていってほしいと、かつて「男の子のもの」を選べなかった子どもだった僕は願っています。
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