突然家に現れた甥っ子
その日は子どもたちの水泳教室があり、仕事の帰りに迎えに行ったクボさんは帰宅後バタバタと夕食の支度をしていました。
「夫も帰ってきて、そろそろテーブルにお皿が並ぶってときにインターホンが鳴って。見てみたら甥っ子が立っていて、本当にびっくりしました」
夫が対応に出ると、甥っ子は「きょうは家に誰もいないからご飯がなくて」と平然とした調子で口にしたと言います。
来ているものをそのまま帰すことはさすがにできず、クボさん夫婦は甥っ子を招き入れて急遽メニューを追加、みんなで食べたそうです。
「そのとき気になったのが、甥っ子はご飯がないからうちに行けと父親から言われていたようで、でも夫は兄からそんな連絡は受けておらず、確認もなしにあてにされたことでした。夫も急なことで困惑しており、甥っ子が帰ってから兄に電話をしていましたね。
そうしたら、『困っているなら助け合うのが家族だろう』と言われたそうで、『我が家にも都合がある。もし外食にでも出ていたらどうするんだ』と言い返したそうです」
たまたま家にいたからいいけれど、連絡もなしに来られても困るし、そもそも甥の食事をこちらが面倒をみる筋合いはなく、「実家の図々しさに呆れた」とふたりは話していたそうです。
「もうこんなことはないだろう」と思っていましたが、それからまた3日後に同じ言い訳で甥っ子が家に現れ、そのときは夫の兄も実家も電話には出ませんでした。
ふたりは仕方なく甥っ子をもてなし、「次からは父親に電話をさせて」ときつく言い渡して帰したそうです。
「世話をして当然」!?
そのころ、クボさんの夫は仕事が忙しく残業になる日もあって、次に甥っ子が家に来たときはクボさんと子どもたちで食事をするところでした。
当たり前のように箸を要求する甥っ子に、たまりかねたクボさんが「お父さんやおばあちゃんは何て言っているの?」と尋ねると、「お金がないから仕方ないんだって」とすぐ返されたそうです。
「何と言えばいいのか、本人を目の前にして『うちにたからないで』と言うことはできないし、罪悪感もない様子で座っている甥っ子を見ると、今後のことが怖くなりました」
帰宅した夫は甥っ子の訪問に『もう我慢できない』と怒りだし、その足で実家に向かいます。
「数時間後に帰宅した夫は、疲れ切った様子で『兄の息子なのだから、お前も世話をして当然と母親に言われた』とこぼしました。
『それが家族』とも言われたそうですが、自分の息子や孫をそんな形で家から放り出す義実家もどうかと思うし、甥っ子自身も問題がありますよね、いつまでも働かずに実家に迷惑をかけているわけで、そんな自分をどう思っているのか、手に負えないと思いました」
そのときを振り返ってクボさんは肩を落としますが、クボさんの夫は「次に甥っ子が家に来ても入れないとはっきり伝えたから。うちだって子どもがふたりいて余裕はないし、勝手にあてにされても困るからな」と強い口調で言ったそうです。
その日以来、甥っ子が家に来ることはなくなりましたが、義母から電話がかかってきたときに「家族を大事にしないのか」と文句を言われたクボさんは、思わず「成人した大人なら自力で何とかするのが当たり前では」と返し、「ひどい」と喚く義母を無視して通話を終えます。
夫に報告すると「それでいい」と言われ安心したとクボさんは言いますが、このときから義実家とは険悪な空気で、いまも足を向けることはないそうです。