実際に母を自宅に呼び寄せて感じたメリット・デメリット
私の母も「自分の自宅のある山梨に住み続けたい」と思っていました。
最初は、母の思いを尊重して介護サービスを利用し、東京と山梨を行き来しながら母の生活を見守っていました。
しかし、しばらくすると母の認知症は進行。久々に実家へ帰省すると家のなかはゴミ屋敷状態、夏場でもエアコンを使わず厚着で過ごす母。
その様子を見てひとりでの生活は無理だと思い、急遽東京の自宅に呼び寄せることにしたのです。
実際に母を自宅に呼び寄せてみて次のようなメリット・デメリットを感じました。
- メリット
- 一緒に住むことで、母の認知症の症状がよくわかるようになった
- 母にとって私の子ども(孫)とのコミュニケーションが良い刺激になる
- デメリット
- 平日は日中独居になることがある(仕事や学校などでほかの家族が日中に家にいなくなり、高齢者が1人になってしまうこと)
- 母の社会的なつながりがなくなる
- 母と生活のリズムが合わない
- 家族(私・夫・子ども)で旅行や遠出ができなくなった
母を自宅に呼び寄せて一番よかったことは、「いざというときに駆けつけられない」「日々の状況を見守れない」という不安がなくなったことです。
また、子どもとのコミュニケーションがよい刺激になり、母の表情が以前より明るくなたように感じました。
しかし、しっかりと考えて準備をせずに母を呼び寄せてしまったことで、数々の問題も発生しました。
私は、「同居したら介護サービスを利用する必要はない」と思っていましたが、それが返って、母に悪影響を及ぼしたり、家族の負担にもなってしまったのです。
母が山梨にいたときは、ご近所との交流もあり、社会的なつながりもありました。しかし、私の家に来てからは、私の家族としかコミューケーションを取れていない。社会的なつながりがなくなってしまったのです。
最初のうちは、孫と毎日一緒に過ごせて嬉しそうな母でしたが、知り合いのいない土地での生活でしだいに意欲が低下し、家で寝て過ごすことが多くなってしまいました。
また、「呼び寄せ介護」は母だけでなく、夫と私の夫婦仲にも悪影響を及ぼしました。
自分の自宅で「呼び寄せ介護」をする場合、当然ながら夫の理解が必要不可欠です。
最初は母との同居に賛成してくれていた夫ですが、しばらく経ったある日、夫にこんなことを言われました。
「いまの生活は精神的に疲れる。このままだと家庭崩壊になりそうだ…」
夫は母がいることで、家族で旅行に出かけたり、家族団らんの時間を過ごすことができないと感じていました。
実際に休日に家族で外出するときも母を家に一人にしておくのは心配で、母も連れて外出するこことが多かったのです。
私たち家族だけ過ごす時間は、ありませんでした。夫が不満に感じるのも当然のこと。私が逆の立場だったら、同じことを思ったかもしれません。
「同居したから、介護サービスは利用しなくても大丈夫だろう」と考え、介護サービスをうまく活用しなかったことが家庭崩壊に陥った大きな原因だったと思います。
いま考えてみれば、デイサービスやショートステイをうまく利用しながら家族の時間を確保することも可能でした。
また、母もデイサービスを利用することにより、家族以外の方とコミュニケーションをことができたのではないかと反省しています。
実際に母を呼び寄せてよかった面もありましたが、一緒に生活をすることは思っていた以上に大変なことでした。
しっかりと考えて準備をしたうえで、呼び寄せないと本人にも悪影響を及ぼすし、家族にも負担がかかってしまうことがわかったのです。
しばらくして、夫との関係がこれ以上悪化するのは子どものためにもよくないと思い、母との同居生活をやめることにしました。
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現在母は、私の自宅近くにある高齢者住宅に入居しています。よかれと思って母を呼び寄せたことは、母にも自分の家族にも負担をかけてしまいました。