「父の死」を伝えたときの母は、意外と落ち着いていた
私は涙をこらえながら、母に「父の死」を伝えしました。
「この前、お父さんの病院に行ったの覚えている?」と聞くと、母は「そうだったっけ…?全然覚えてない…」と言う母。
続けて私は「お父さんずっと入院してたでしょ?入院中に体調が悪化して、一緒に面会にいった後、亡くなったんだよ…」と母に伝えました。
すると母は「やだ!なんでもっと早く言ってくれなかったの!何か遺言はなかったの!」とその姿は、意外にも落ち着いているように感じました。特に取り乱すこともなく、泣き崩れることもなかったのです。
「危篤状状態のときに会いに行ったんだよ。覚えてないの…?最後は意識がなくて何も喋れなかったんだよ。あした通夜だから、最後にお父さんに会いに行こうか」
母に「父の死」を伝えた後、父の遺体が安置されてる霊安室(遺体安置室)に向かいました。
霊安室(遺体安置室)へ向かうタクシーのなかでも、母は「父が亡くなったこと」を忘れてしまったのか、どこへ出かけるのかわかっていない様子。
霊安室(遺体安置室)に到着し、父の遺体と対面した母は、やっと「父の死」を理解しだしたのか、その場で泣き崩れました。
その後、母が暮らすサ高住に戻ると、「お父さんが死んで、私はこれからずっと一人でここにいなきゃいけないの!?」としばらくの間、取り乱した様子だったので、その日は私の家に連れてくることにしたのです。
いままでは、少し前のことはすぐに忘れてしまっていたのに、父の遺体と対面したことはすぐには忘れませんでした。
私の家に来てからも、しばらくは落ち込んでいる様子の母。しかし、私の子ども(孫)と過ごすうちに「父が亡くなったこと」はすっかりと忘れてしまいました。
葬儀を終えて「父が亡くなったこと」を忘れている母
葬儀当日も「誰の葬儀なのか」理解できていない母。父の遺影を見て「父が亡くなったこと」を再び思い出し、終始涙をうかべていました。
葬儀を終えて母をサ高住に送ると、「なんだかすごく疲れたけど、きょうは何があったんだっけ…」と言う母。母は、また「父が亡くなったこと」を忘れていました。
葬儀があった日は、母も酷く疲れていたので、「きょうは親戚の集まりがあったんだよ!久々に大勢の親戚とあったから疲れたんじゃない?」とその日はあえて「父の死」を伝えることはしませんでした。
次の日、母のもとを訪れると母は「お父さんはまだ入院しているの?最近会いに行った?」と私に聞いてきてきました。
母は、完全に「父が亡くなったこと」を忘れてしまいました。