上下関係は、「犬の安全」のために必要
ちなみに私は、餌を期待して「イキイキ」してるとき(期待しているとき)には、お菓子を与えません。なぜか?「ドライブ」を強化したくないからです。
犬自身、自制ができる動物です。諦めることができます。ただし、「教えれば」です。「諦めろ」は、飼い主が教えなくてはなりません。
私は犬たちに「諦めること」を教えますが、お菓子をほしがるときにお菓子を与えることもあります。つまり、私次第ということですね。
さて、「イキイキ」と従うという矛盾。これ、おかしいんです。
たとえば、飼い主が叱っているとき、「No」とか「ダメ!」とか叱るときに、「座れ」を命令したとします。
帰宅時に飛び掛かってきたり、犬が興奮しすぎているときなど、その犬の行動を迷惑に感じたとき、叱るとしますよね?
「おすわり」と、怒鳴ったとします。すると、犬がイキイキと楽しそうに「は~い!座りまーす!」と従った。
これ、コミュニケーションが取れていません。おかしいですよね?
人間同士であっても、こちらがムッとして「迷惑だ!」と伝えているのに、相手が笑っている。相手は、こちらの心理、気持ちを全く理解していないということです。これと同じです。
「何度言ったらわかるんだ!」と上司が怒っているのに、笑っている社員。「ここに、正座しろ!」という親の指示で、「はいは~い!座りま~す!しばらくお待ちくださ~い!」ってイキイキと座られたらどうです?
凹むこともなく、反省すらない状態です。
これは「服従」以前に、意志の疎通ができておりません。
対価があろうがなかろうが、得があろうがなかろうが、「従わせる」ことは威張るためのものではなく、犬が自制して興奮せずに理性を保つ=安全のため。
上下関係は、犬の安全のために必要なのです。
自分の欲求を抑えて、従わなければならないとき、人間も「しぶしぶ」従うはずですよね?諦めて従うんです。
「イキイキ」と従う…これ、言葉おかしいですよね?「イキイキ」とは、自分の欲求が叶うことを期待している、前向きな表現ですから。
最初にお見せした動画、オビディエンスという名の「芸の発表会」であることはおわかりいただけますか?「イキイキ」と芸を発揮しておりますでしょ?
この動画の最後の方、3匹の犬が並びます。
2匹は最初から登場していた犬です。黒と茶色。そして、緑のシャツをきた女性が連れて来た犬。
11:50からです。12:02あたりで動画を止めてみてください。
3匹が並んだとき、飼い主と犬が「飼い犬」としてBONDしている(繋がっている)のは、どの子でしょうか?
ずっと飼い主の顔を見上げている黒い犬か、茶色い犬か、最後に登場したグリーンのシャツの女性が連れて来た犬か…。
体の硬さ、興奮度、「お菓子を期待している犬」か、飼い主を気にかけている犬か、集中力がどこにあるのか?
耳の角度、犬の頭のなか(タイヤがあるとイメージしてください)がどこに向かっているか、ドライブかバックギアか…などなど、自分の目で見て感じてください。
あなたなら、どの犬を選びますか?
想像してください。
動画のようなコンテスト、競技場の周りに興奮している犬たちが居たら?もしくは、競技中にほかの犬が乱入したら?
動画に登場した犬たちは、どうなると思いますか?
登場した犬の欲求が、ハンドラーの持つ「お菓子」ではなく、周りにいる犬たちに近づきたい、仲間に入りたい、遊びたい…など、別の欲求があった場合、犬は欲求の高い方に体が動いてしまいます。
これは、人間の子どもも同じです。何かを見つけて、道路に飛び出したり、急に走り出したりする…これが子どもですからね。
そういう場合、子どもに対して「お菓子」をチラつかせますか?
大人だってそうです。ダイエット中、甘いものを控えているのに、目の前にあるお菓子を食べてしまう人が多いですよね?
そういうとき、誰かが命令してくれて、お菓子を取り上げてくれると諦めがつく…でしょ?
「イキイキ」の躾だけでは、犬の安全は確保できません。「しぶしぶ」が大事なこと、気づいていただきたいです。
何のために、人が犬の上に立たなければならないのか。噛まれないために?言うことを聞かせるために?犬が人に反抗しないように?
違いますね。上下関係を重要視するのは、犬を守るためです。人を守るためです。加害者、被害者にさせないためです。
犬にリードを付ける、リードは外さない…これは犬の自由を奪うためではありません。命を守るためです。
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