コロナ禍からすっかり日常が戻り、町にも活気が戻ってきました。
それはそれでとてもハッピーなことだと思いますが、最近ニュースやワイドショーでよく目にするのがインバウンドによる外国人観光客の問題。
特に目を引いたのは「富士山が見えるコンビニ」問題。
なんてことない住宅街に観光客が押し寄せてコンビニと富士山を撮影するもんだから、車道に人がはみ出て「危ないんだわコラ!」状態で住民は大迷惑と。
で、地域住民からのクレームと絶え間ない外国人観光客に悩んだ挙句「見えないようにしちゃえ」と黒い幕を歩道に設置するという策を講じてワイドショーで取り上げられまくってしまいました。
「黒い幕」は、その場しのぎの策?
ちなみにわたし自身も、富士山は大好き。
小さいころ暮らしていた群馬県から大阪府の親戚の家に遊びに行くときに乗った東海道新幹線から見えた富士山に感動して以来、富士山が見えるとうっとりしてしまうほど。
いまは神奈川県住まいですが、マンションからも富士山が小さく見えて、空気が澄んでいる冬には美しい富士山を眺めたりします。
なので、外国人にも富士山の魅力が伝わるのはとても嬉しい。
だけどなぜ「コンビニと富士山」が映えスポットになったのかは謎。
いちおう理由としては「コンビニの屋根に富士山が乗っているみたいだから」らしいけど、個人的な感想は「お、おう」という感じ。そんな珍しいかな、これ。
ここに限らず、SNSの普及でなんてことない場所も「映えスポット」として注目されるようになり、そこに観光客が集中しちゃうきょうこのごろ。
山梨県、静岡県界隈なら、富士山がすっきり見える場所なんてたくさんあるだろうに、なぜか選ばれてしまった「富士山とコンビニ」スポット。
なんでも観光バスまで、「写真スポット」とこの場所に撮影ツアーを組んでしまっているようで…そりゃあたまったもんじゃないですよね。
最近は従来の観光地でも外国人観光客だらけで辟易するのに、近所に外国人観光客がワラワラ来られちゃね。
その迷惑はとてもわかるのだけど、その対策として「黒い幕を張る」というのは、「臭いものにフタをする」というその場しのぎの策であるということはわかってやっているのか少し疑問。
こんな黒い幕をした程度で「ご迷惑だったかしら」と察してくれるとは思えません。いや、察してくれる人たちならまず迷惑行為をしないでしょうに。
そして黒い幕で見えないようにするというのはなんともナンセンスというか、美しくない。
美しい日本にきて、「工事中」みたいな幕を張って隠すというのはね。せめて日本らしい生垣的なものにするとか。…ってそういうことじゃないか。
だって黒い幕で覆っている景観は地元住民も目に入るわけで、それは気持ちのいいものではないでしょう。
さらに、効果が薄そうなのも想像できてしまう。実際、黒い幕を設置した後もお構いなしに車道側で撮影する人も続出。さらに貼られた黒い幕に穴をあけてそこから撮影している人も多いとか。
それどころかコンビニの駐車場側に人が溜まってしまったりと、別の問題も発生。
注意喚起のために黒い幕にQRコードを貼って事情を説明したりしているようですが、どこまで響くかは謎。
それでもこの黒幕設置で観光客は減ったそうですが、たぶんその理由は「ちっ、幕張って撮影できないんだってよ、ほか行くか」な程度。
「まぁ、わたしたちって大迷惑なことをしていたのね。申し訳ないからほかでもマナーを守って観光しなくちゃね」とはならないと思います。
そして、きっとほかの場所に流れているのかなと予想します。
富士山関係ではほかにも「富士山夢の大橋」とか映えスポットがいっぱいあるようだし。
世界標準に合わせるのは悪いことではない
富士山まわりの話で言えば、富士登山も観光客が多すぎてついに入場料金を取るようになりましたね。
3000メートル超えの山なのにハイキングのノリで半袖半ズボン、手ぶらで登ってきてしまったりする人も増えて、レスキューも手一杯なんだとか。
とりあえず静岡側に門を設置して有料にしたものの、2000円ってすごく安いんですってね。
登山家の野口健さんいわく、「外国の山は万単位で当たり前に取る」とのこと。(参考:読売新聞)
観光客が増える分、そこに割く設備維持費や人件費は必要になってくるわけで、いよいよ日本も観光客に本気で向き合わないといけない感じになってきたようです。
富士山に限らず、オーバーツーリズムは問題になってて、京都なんてただでさえ人の多い場所なのに、外国人観光客だらけで行く気も起きないという状態は数年前からあったし、観光客のマナーの悪さも問題視されていました。
そして、コロナ禍が明けてさらに日本は円安で物価も安い国になり、より来やすくなってしまった。
これからいろんな場所で、オーバーツーリズム問題は加速しそうな予感です。
でもこのオーバーツーリズム問題って、日本だけじゃないですよね。
日本は国土が狭かったり、京都や鎌倉に人気が集まってゴミゴミになりがちではあるけれど、外国だって似たようなことが起こっているはず。
少し調べてみました。すると、あるある。
イタリアのローマでは、「ローマの休日」に出てきたスペイン広場の会談に座ってアイスを食べることや、トレビの泉の淵に腰掛けることが禁止されていたりする模様。
そのほかスペインのカナリア諸島ではオーバーツーリズムに反対するデモが行われていたりと、海外でも似たようなことは起こってるようです。
来るだけ来ても経済効果がないことを「ゼロドルツーリズム」というのだそう。たしかにこのコンビニ富士山なんて、その典型ですよね。
何か解決策はないのかと思い、いろんなケースを調べてみて見つけたのが、岐阜県の白川郷の例。
茅葺屋根の小さな集落に観光客が押し寄せ、昔やはり同じようなオーバーツーリズムとゼロドルツーリズムに困り果て、本気で対策。いまはこの地域に入るのは、完全予約制になっているそう。
さらに茅葺屋根と木造建築は火事が大敵とのことで、その対策も徹底し、観光ばかりに流されず、景観を守ることに舵を切った結果、いまは「世界の持続可能な観光地100」に選ばれているのだとか。これは、成功事例として見習うところがありそう。
白川郷のように小さい街が観光地化してしまった場合は、観光バスで乗り付けた観光客がワラワラと歩かれると地元住民はたまったもんじゃないというのはわかります。
これも外国でもありそうだなと調べてみると、わたしがぜひ行ってみたいスペインの白い街「ミハス」なんかも、入村の際にはローカルガイドをつけて入ることが決まっているそう。
取り締まりも厳しいようで、やっぱりきちんと対策しないといけないなぁというところですよね。
そのほか、日本はまだ躊躇している面が見えますが、「外国人料金」を設定するのも検討したほうがいいような気もします。
地元住民は無料もしくは安い価格で、外国人にだけ高い入場料を取る「外国人料金」を取る施策は海外でも割と多いらしく、代表的なものだとインドの「タージ・マハル」、エジプトの「ピラミッド」、ハワイの「ダイヤモンドヘッド」なんかも地元民と観光客との入場料が数倍違うなんて当たり前だとか。
兵庫の姫路城がやはり外国人料金を検討しているらしいけれど、日本もこれだけ観光客が増えてきたら、強気価格で対応する必要がありそうです。
日本人ってこういうことに躊躇しそうですが、観光資源の豊富な国なので、世界標準に合わせるのは悪くないと思います。
わたし自身も、出かけた先で外国人観光客が多く見かけるようになり、なんというか日本人とはまた違ったワイルドな写真撮影を目にしたりすることも多いです。
だからといって自分が海外に行ったときに迷惑をかけないかというとそれもわからず、開放的になってついつい羽目を外してしまうかもしれない。
旅行や観光って、いままでにない刺激を受けられてとても楽しいことだと思うからこそ、行く側も来てもらう側も気持ちよくいられる状態が一番だと思います。
だけど、なかなか正解がないのが難しいところ。個人のマナーやモラルが上がれば最高だけど、それってひとりひとりの問題なのでなかなか難しい。国民性もあるし。
となるとやはり、観光地化してしまった場所は、それなりの対策を取るしかないのかなと思います。
その場所の住民の意向とは当然ありますが、入場制限するなり、お金を取るなり観光整備をしてしっかりお金をいただいて、管理していく方向が一番現実的なのかなと思います。
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