結婚すればお付き合いが避けられないのがパートナーの実家ですが、義実家のなかで自分の立ち位置を勝手に下げられると、普段から窮屈な思いをします。
同じ人間なのに、「兄弟の誰の妻か」で勝手に扱いを変えられるのは、気分のいいものではないですよね。
たまたま「次男の嫁」となったある女性は、義実家で下に見られることに常に疑問を感じていました。
不当な義務を課されることに限界を覚えた女性は、どんな反撃に出たのでしょうか?
「長男の嫁」が一番偉い?
麻由子さん(仮名/35歳)は、ひとつ年上の夫とは職場結婚だったそうです。
「地味だけど地に足のついた生活をお互いにしていて、同じ会社にいて2年の同棲も違和感がなかったです」と振り返る麻由子さんにとって、夫との結婚は当然の選択とも言えました。
気が弱くて自己主張が足りない面もあるという夫ですが、責任感があり交際でも約束を当たり前に守る姿に信頼を置いていたそうです。
交際時から夫の実家には何度か遊びに行っており、同棲を始めたときも挨拶に伺ったことがありました。そのころは夫の兄が結婚したばかりで、義実家はお祝いムード。義母も義父も、「どうぞよろしくね」と笑顔で挨拶してくれたとのこと。
夫は次男で、長男とはそのときが初対面だった麻由子さんですが、一緒に紹介されたその奥さんには、このときから違和感があったと言います。
「何ていうか、『私は長男の妻なのよ』って雰囲気が最初からありましたね。義実家についてあれこれ知っていて義母たちとも仲がよく、私の前で『将来は二世帯住宅にしたいですね』と笑顔で話すのを見て、どうしてこんなに対抗意識を持たれるのだろうかとちょっと怖かったです」
夫とはまだ結婚の話など出ていなかったけれど、なぜか次男の妻候補と見られていることを、麻由子さんは意識します。
そんな長男の奥さんについて、当時の夫は「あの人は前から気が強かったから、結婚して兄の実家は自分のものくらいに思っているのだろう」と、たいして関心もない様子だったそうです。
一方的に下げられる「自分の位置」
それから2年後、麻由子さんは無事に入籍し、夫と新しい家庭を構えました。
賃貸だけど広いマンションに住み、仕事も引き続き続けている麻由子さんでしたが、義実家とのお付き合いは「結婚する前に想像していたよりずっと大変でした」と肩を落とします。
それは、義実家に入り浸る長男の妻から「下に見られる」ことで、普段から麻由子さんはあれこれと用事を言われることが多かったそうです。
義実家に夫と行けば「お茶を入れてきてよ」と長男の妻に言われるし、義父の誕生日でお祝いに駆けつければ食事の準備から後片付けまで全部麻由子さんの仕事で、「お義姉さんは義母の隣でにこにこ座っているだけでしたね」と、家政婦のように自分をこき使うのが当たり前でした。
「そのときは、見兼ねた夫がキッチンまで来て、ひとりで大量の皿を洗っている私に『俺も手伝う』と言ってくれました。食事中も、私がお茶のお代わりや新しいお皿を取りに走っていてろくに食べておらず、義母やお義姉さんたちはそれが当たり前のように座っていましたね」
何で私がこんな目に、と愚痴れば「うちは兄が強いから…」と夫は小さな声で謝罪するばかりだったそうです。
その義兄も、麻由子さんに感謝の気持ちを伝えるでもなく、何もしない自分の妻にも何とも思っていないようでした。
「義実家では、長男とその嫁が偉いみたいな空気です。次男の夫は気が弱くて部屋でも隅っこにいるし、その妻の私なんか、あの人たちからすれば召使い程度の認識なのだと思います」
自分たちが結婚する前からマウンティングが激しかった義姉の様子を思い出しながら、麻由子さんは悔しそうに言いました。
「義実家にいるとき、『麻由子さん、そろそろ洗濯物を入れないと』っていきなり義母から言われてぽかんとしていたら、お義姉さんも『そうね、もうこんな時間』って私を見て、隣にいた夫が慌てたように立ち上がったことが、いまも忘れられません。何で次男とその妻ってだけでこんな扱いを受けるのか、結婚して最初の一年は本当にストレスが大きくて、義実家に行くと決まったら胃が痛くて口角炎がよくできていました」
そんな現実が大きく変わったのは、義母の入院がきっかけでした。