義母の世話は「次男の嫁」がするもの?
その年、義母がぎっくり腰で入院することになります。麻由子さんは「正直に言えば、これで義実家に呼ばれることも減るなってホッとしました」と夫から報告を受けたときに思ったそうです。
風邪を引いて寝込んでいた義父に代わり、入院の手続きなどは義兄と妻がやったと聞いていた麻由子さんは、ある平日の昼間にその妻から電話を受けました。
「仕事中でしたが、義母に何かあったのでは、とトイレに走って慌ててかけ直しました。そしたら、義母の洗濯物を取りに行って、新しい下着や寝巻きなどを持っていってとお義姉さんに言われて。取りに行くと言っても、あのときは新型コロナウイルス感染症の流行で面会の時間が制限されていて、私の仕事が終わってからじゃ間に合わない、と思いました」
正直にそれを言うと、「お義姉さんは、イライラしたように『じゃあお義母さんはどうするのよ?』って。どうするのよって、自分が行けばいいじゃないですか、専業主婦で私より時間があるのだから」と、ストレートに怒りを覚えたという麻由子さん。
義兄は特殊な仕事をしており年収が高く、義姉はたまにアルバイトに行くような生活をしていて、どう考えても麻由子さんより自分のほうが動きやすいはずでした。
「仕事を早退することは難しいし、病院には行けないですね」とそのまま返した麻由子さんに、長男の妻は、「お義母さんの世話は次男の嫁がするものなのよ?あなたが行かないなら◯◯くんはどうなの?」と、さらに苛立った声で答えます。
「あくまでも自分は動かず次男かその嫁が無理をしてでも世話をするって、本当にとんでもない人間だなと思いました」
そのときは電話だったせいもあり、怒りを抑えられなかった麻由子さん。「お義姉さんが行けばいいじゃないですか、と言いました。私は社会人なので忙しいですと続けたらまたキーキーとわめきだして、呼び出されたことにして電話を切りましたね」
これが、麻由子さんが初めて長男の妻に反発したときでした。
正当な「主張」
それからすぐ同じ社内にいる夫に電話した麻由子さん。
長男の妻が気弱な夫に用事を押し付けるのは目に見えていて、先回りしてそれを伝え、「私は無理だからね」と釘を差したそうです。
夫は麻由子さんの怒りを含んだ声に息を呑んだそうで、「兄に電話してみる」とだけ返し、通話は終わります。
一日中嫌な気持ちが消えなかったという麻由子さんでしたが、帰宅後に夫から「兄と話して、義姉さんが行くことになったから」と報告を受けて思わず涙が出たそうです。
「何で私たちがこんな思いをしないといけないのか、悔しくてたまりませんでした。夫のしょげた様子から義兄に責められたのがわかって、こんな非常識な人間たちとはもう付き合えない、とはっきり思いましたね…」
泣きながらこれまでのストレスをぶつける麻由子さんに、夫は「しばらく実家に行かなくていいよ」とだけ返したそうです。
何もしない義父についても麻由子さんは疑問を持っており、「あなたたちが私のことをどう見ようと勝手だけど、私もひとりの人間なの。私にも都合があるの。それを無視しないで。自分の家族のことなのだから、まずは自分たちで何とかしてよ」と、義母の入院やその後の介護についてもいっさいやらないことを宣言します。
家族の、自分や妻への扱いをどう思っていたのか、いままで「流されるがままその場にいただけ」だった夫は、「わかった。君は何もしなくていいから」と麻由子さんの言葉に反発は見せなかったそうです。
その後、義母や長男の妻について夫は何も言わなくなり、しがらみから解放された麻由子さんは「やっと自分を取り戻しました」と笑顔で話しました。
兄弟の妻の間に上下をつけ、次男の妻だからと一方的に価値を下げてくる義実家と、まともな精神で付き合えるはずがありません。
そんな状態を許す夫にも問題はあり、「自分の家族の問題は、妻を巻き込まずに自分たちで解決を考えるのが先」という麻由子さんの主張は、正しい主張と言えます。
長男の妻は、義実家に取り入り自分の存在感をアピールするのであれば、「義母の世話をするのも当たり前」というのが、麻由子さんの気持ちです。
都合の悪いときだけ次男の嫁の立場を持ち出してこちらに負担を押し付けるのは、身勝手が過ぎるというもの。
「私は自分の人生を大切にします」と、麻由子さんは今後について改めて考えているところです。
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