多様性のもたらすもの。人口の98%以上が日本人という日本では見過ごされがちな感覚や視点について、海外の時事ネタを交えつつ考察していきます。
本格的?なメディテーション体験記
精神を落ち着かせて集中力を高める効果があるなどの理由から、近年、ヨガやメディテーション(瞑想・黙想)が人気を集めています。
ニューヨークでも本格的なコースを受けることができます。
私自身、メディテーションへの興味はあったけど、なぜかこれまで受けたことがありませんでした。せいぜい、アプリを使った簡易的なメディテーションのみ。
例えば、「Breathe」というアプリは、各種メディテーションプランの他に、アップルウォッチ用の通知があります。ピロン!と通知が来るので、その度にスーハーと10秒かけて息を吸って10秒かけて息を吐くというもの。
これらのアプリが提供してくれるガイダンス付きの精神統一がメディテーションだと思っていました。でも、こういうのだけじゃなかったんです。
この前、友人の誘いで、無料のメディテーションクラスに参加してきました。
会場は、ビルの3階の一室で程よい静けさの清潔な空間。とてもゆっくりとした優しいトーンで話す人が受付にいて、いかにもメディテーション関係の方という感じ。部屋には、10個ほどの座布団と少し高さのある、あぐら用の四角いクッションが置かれていました。
開始時間の10分前でも、すでに2人ほどの方がメディテーションをはじめていました。
目を閉じ、あぐらをかいてじっと座っていました。しーんと静まった室内で、正面には仏教にまつわるような掛け軸やろうそく、小さい鐘、水の入ったグラスなどが置かれています。しばらくして、男性が部屋におじぎをして入ってきました。そして男性が正面にある線香のようなものやろうそくに火をつけはじめます。
すると私たちのほうを振り返ってさっと見渡し、
「今日はろうそくは消しておこう」
と言い、点けた火を手で消しました。
そのあと、男性が正面端に用意されたざぶとんに座り、そのすぐ横に置かれている丸く大きな鐘のようなものを、ゴーン…と軽く鳴らしました。
男性はまっすぐ前を見据えていて、視線はどこを見るでもない、「空(くう)」を見ているような感じ。これから始まるのかな?とわくわくしながら背筋を軽く伸ばして同じように「空」を見てみました。
数分経過しても相変わらず男性は「空」を見ている様子。このまま進むのかな?と、なんだか自分だけ置いてけぼりの気分になりましたが、ほかの参加者もほとんど動かずじっと座っていました。
上述したアプリではだいたい音声ガイダンスが流れます。メディテーションの音声ガイダンスを聴くだけでも心の平穏が保たれそうなものとなっているのです。
ガイダンスはいつ来るのかなあ?とわくわくしながら待っていたのですが、正面で私たちに向かって座っている男性は変わらず「空」を見続けていました。
私もひとまず、「空」を見て集中しよう。
そう思い、一点を見つめると集中できるような気がしました。例えるならマラソンハイのような集中状態に。
そんな自分が過去に経験したマラソンハイの感覚を思い出しながら「空」を見つめ続けました。そして、またしばし時間が経過。感覚的にはだいぶ時間が経った…ように感じたのですが、時計もスマホも持っていなかったので時間がまったくわかりません。
相変わらず男性は微動だにせず「空」を見続けていたのですが、何のガイダンスもなし。そう、このメディテーションは何のガイダンスもないまま行うものだったのです。ようやく状況を把握して隣の友人を見てみると、平気そうに「空」を見ながらぼんやり。
少し戸惑いもありましたが、どのようなメディテーションかがわかったので、ひたすらぼんやりと「空」を見ながら考えることに。
シーン…と静まり返った部屋。
窓の外からはニューヨーク名物のクラクションや、ときどき救急車のサイレン音も聞こえてきます。完全に無音ではないけれども、ただひたすら自分の考えに集中すると、だんだんと外の音が次第に気にならなくなっていきました。
ひたすら「空」を見る。マラソンハイのような状態になったところで、男性が開始時と同じように鐘をボーンと鳴らしました。そして最後に、シャンバラの教えのような冊子の一説を読み、この日のメディテーションが終了。終始、穏やかな空気が流れていたような気がします。
1時間何にもせずに、スマホも見ずに、そして誰とも会話しない。特に気分がすっきりしたわけではなかったけど、なかなか貴重な体験でした。もしかしたら最初にどんなメディテーションであるかの説明が一切無かったことから勘案するに、このスタイルは当たり前なのかもしれません。
またやりたいかと言われると、よくわからない。けれども、家やオフィスではなく、専用の会場で周囲の邪魔なく自分の考えに集中できる空間はなかなかないので、日々の忙しさで混乱しているとか、とにかく忙しすぎるという人は、ジムで筋トレするような感覚で参加するのもいいかもしれないです。
ちなみに友人は、最初の20分で考えるべきことをすべて考え終えてしまったので、残り40分は人生を振り返り、未来の途中で時間がきたのだとか。
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