予定をこまめに入れられないアメリカの交通事情
以前、ハリウッドのほうへ遊びに出かけたときの話です。友人とのランチ前に街をブラブラしようと、待ち合わせ時間の40分前には自宅を出ました。
カーナビでは、自宅から目的地までの所要時間は「30分」と出ていました。しかしこの所要時間に「渋滞」はカウントされていません。結果、待ち合わせしたハリウッドのホテルに着いたのは、自宅を車で出て1時間ちょっとでした。
そして2時間弱ゆったりとランチを食べ、ブラブラと繁華街を歩きながら時計をみると、もう夕方6時。空いていれば30分で帰れる距離でしたが、再び渋滞に巻き込まれ2時間ほどかけて帰宅しました。8時間ほど外出した1日でしたが、日本だと8時間もあれば東京でごはんを食べ、名古屋で買い物、大阪でディナーなんていうことも実現不可能ではありません。
車で30分で行ける場所に1時間も2時間もかかるアメリカの交通事情があるからこそ、多くのことができない。「ハリウッドでランチ」とひとつメインの用事を入れるだけで、8時間もの時間がかかります。だからこそ、スケジュールは詰め込まない。予定をこまめに入れられないという交通事情が、アメリカにはあります。
なぜアメリカには日本ほどの「あおり運転」がないのか
日本よりひどい交通渋滞のあるロス。なのに、日本ほどのあおり運転がないのはなぜか。それは、「諦め」と「慣れ」そして「恐怖」。その3つが国民の感性に埋め込まれているからでしょう。
「渋滞でイライラしてもしょうがない!」という諦めの境地はアメリカ人なら誰もが持っているし、ストアのレジで行列ができていたとしても、混むのは「当たり前」だから「諦める」。「慌てたって、しょうがない」に慣れてしまっているのです。
ここで、こちらでのドライブレコーダーの使用用途を説明します。車内が映るもの、360度後方まで映るもの、日本では「あおり運転」のお陰で売れに売れているらしいのですが、アメリカでは実は行き過ぎた「取り締まり」から身を守るためという皮肉な使い方があることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
アメリカでドライブレコーダーが売れ出されたきっかけは、「警察の態度」を浮き彫りにするためであったように思います。本来、警官の乗るパトカーにはドライブレコーダーが搭載されていて、危険な公務に携わる警官を守るために付けられているわけなのですが…実は「横柄で横暴な公務」を暴くために市民の間に広まりました。
とにかく、こちらの警察は行使力が半端ないのです。威圧的で弾圧的な人もたくさんいて、おまけに銃を持っています。Black Lives Matter(BLM)のきっかけとなった、白人警察官が黒人の市民に対し、必要以上の暴力を振るい怪我を負わせた事件も、そのひとつです。アメリカでは以前から、このような警察官による差別的な暴力が非常に問題視されていました。
このニュースはスマートフォンでの撮影とSNSでの拡散で広がりましたが、同様の暴力問題は誰でも撮影できるドラブレコーダーの映像をもって、より明るみに出るようになってきたのではと思います。
交通違反で警官に暴力を食らう市民の様子とやらが、ドライブレコーダーで録画され、動画にアップされる。それらがニュースで拡散されることにより、警察官の「意識革命」「質の向上」に多いに役に立っているといえます。だから、最近の警官はコンプライアンスを意識してるといえるでしょう。
狭い国に住む日本人のせっかちさは、でかい土地に住むアメリカ人には理解できないのかもしれない。でも「見られている」ことで、人間は理性を保ち、暴力の抑止力への効果は抜群で、それは日本もアメリカも同じです。