かわいいあかちゃん
これは私の以前の職場で、女性の先輩が話してくれた、ちょっとした怖い話です。
先輩は毎朝ジョギングするのが趣味で、公園の決まったコースをいつも走っています。そこにいつも、ベビーカーを押しながら散歩しているおばさんがいました。
「ベビーカーの屋根っていうの?あれで赤ちゃんの顔が見えたことはないんだけどね。朝早くから散歩していてえらいなって思ってたの。毎朝会うから、そのうちおはようございまーすって挨拶するようになったんだよね」
そしてある日、そのおばさんはベビーカーではなく抱っこひもに赤ちゃんを入れていたんだそうです。
「きょうは抱っこなんですねーって声を掛けたの。それで顔見えるかなーと思って少しのぞき込んだら、リアルな人形だったのよ。女の子なんです、って言われて。ああそうなんですか…しか言えなかったよね」
先輩は思わず叫びそうになるのを抑え、失礼しまーすとその場を立ち去ったといいます。そして次の日。
「次の日はね、ベビーカーだったの。おはようございまーすって声かけてそのまま立ち去ろうとしたら、はじめて『抱っこしてくれませんか』って言われたんだよね。ええっと思って、とりあえずいま汗かいてるのでって断ってそのまま走って帰ったんだ」
そしてそのまた次の日。
「私のいつも走ってるコースのど真ん中でね、立ち止まって待ってるの。それで挨拶して通り過ぎようとしたらいきなり腕をつかまれて『抱っこしてくれませんか』って。怖すぎて、さすがに叫んじゃったわ。次の日からジョギングコースを変えたら、会わなくなって安心したんだよね」
さすがに怖すぎる!と、職場のみんなで話していたところ、一部始終を聞いていた店長が口を開きました。
「俺も今朝、人形連れてるおばさんに『抱っこしてくれませんか』って言われたんだ。で、抱っこしたんだよね。そしたら、この子のパパになってくれませんかって言われてそのまま逃げてきた…」
その日から、誰もその道を使わなくなったそうです。