親の死がもたらしたCさんの変化
それまでは社長から仕事で重要な案件を任されるとテキパキとこなしていたにもかかわらず、なぜか仕事に集中できず、むしろ上の空でいる時間が多くなり、自分で何かを決断したり指示を出すことができない。
決断したり指示を出せたりしたとしても、その後に「本当にあれでよかったのだろうか?」と、いいようのない不安に駆られてしまう。そんな自分のことを職場で顔を合わせる部下たちは、みな馬鹿にしているのではないかと疑心暗鬼になって、さらに仕事が手につかない。
そのストレスを、時には部下を激しく叱り飛ばすことで発散したり、家庭に帰ってから妻に八つ当たりして発散するようになる。お酒の量もどんどん増えていく。とにかく毎日、イライラしているか、激しく放心状態で落ち込んでいるかのジェットコースターのような気分で過ごしてしまう。
でも、どうして自分がそんなふうになってしまうのか、Cさん自身は皆目検討がつかなかったのです。
大きすぎた心の柱
Cさんと出会ったのは、そんな状態がさらに進行したころで、「もう仕事も家庭生活も全て放り投げてしまいたいんです」と、ガックリ肩を落とした状態でした。
毒親の影響で、彼らが亡くなったあとも心理的な呪縛に苦しめられることは少なくありません。むしろ亡くなってしまい、溜まりに溜まった本音をぶつける相手がいなくなった方が、より深く悩ましい状況になることすらあります。
実際、Cさん自身も、これまで無自覚に心理的に依存していた「父親という心の柱」を失ったことで、自分自身の存在そのものを見失いかけていたのです。
Cさん曰く、「父親が存命していたころは、こういう父親だと諦めて割り切っていたつもりでしたが、実は割り切るどころか、精神的にはずっと父親に寄りかかっていたのですね」とのこと。
そんな自分に気づき、Cさんは大きなショックを受けていましたが、こんなふうに亡くなった後にも心理的に束縛し人生に暗い影を落とし続けるのが毒親の影響力です。
それにしても、Bさんの親といい、Cさんの親といい、どうしてそこまでして子どもを心理的に執拗に束縛しコントロールしようとするのでしょうか?
ここからは、子どもを心理的に執拗に束縛しコントロールしようとする親の背景について考えてみたいと思います。