社会を恐れ、孤立していく子どもたち
さて、悪意のある毒親にとっては、子どもが自立し、自分の意思で社会に独り立ちしていくことは、まさに身を切るような苦痛といえます。なぜなら自分のフラストレーションの発散相手がいなくなるからです。
なので、子どもが自立しないように、子どもが自分の元から出ていかないように、罪悪感やら恩着せがましさやら、直接的な圧政やら…あの手この手で子どもを手元に縛りつけようとしたり、社会で適応できず、結果として親元にとどまるように仕向けたりします。
子どもが社会の中で独り立ちする過程では、親による何らかの介入(コントロール)は必要ですが、思春期ごろからその介入は徐々に薄まり、そこから先は子どもが自分で独り立ちできるよう、逆に自己責任の方向に向かう練習期間のような状態になるのが一般的です。
しかし、毒親育ちの子ども場合は、こうした練習期間も与えらることがありません。
そうして大人になった子どもは、社会に出てから突如として「自立」をまわりから求められても、どう振舞っていいのかがわからず、どんどん社会を恐れ、孤立感を深めるようになってしまいます。本当に悩ましいですね…。
毒親育ちが抱える悩ましさ
今回は、毒親が子どもを心理的に執拗に束縛し、コントロールしようとする背景について考えてみました。
でも実は、親が反社会性パーソナリティーの持ち主だったとか、なんらかの精神的な病気を抱えていたとか、その背景はもう千差万別です。ただ、どんな背景があるにしても、毒親の呪縛によって子どもが次のような状態に陥りやすいことは共通しています。
- 誰に対しても競争関係で考えてしまい、努力の方向性がずれた“頑張り地獄”に陥りやすい。
- 社会に対して根本的な不信感、疎外感、敵対心がある。
- 自身のアイデンティティが空虚なため、他者の価値観で埋めようとして余計に自分を見失ってしまう。
そのため、毒親育ちの子どもには、改めて自分の「価値観」を再構築するというプロセスが必要なのです。
次回の『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』は2021年7月28日公開予定です。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
【7】私は何をやってもできない人だ。毒親育ちの悩ましい思考の手放しかた
【8】だから僕は、人が怖い。毒親育ちが「生きづらい」人生から抜け出すまでの道のり
【9】離婚したのは、僕のせい?「親の離婚」で傷ついた心の癒し方
【10】それって本当に子どものため?親の「責任」と「過干渉」のボーダーライン
【11】家庭内につくられたヒエラルキー。子どもを弱者に仕立て、支配する親たち
【12】対人関係がシンドイ。側から見ると順風満帆な彼の人生が“難あり”なわけ
【事例1】鬱の母と、子に頼る父。毒親と共依存していた彼女が、親子の縁を断ち切るまで
【事例2】気づけば、3度目の離婚。彼女が「ダメンズ」ばかりを選んでしまったワケ