離婚したいけれど配偶者が話し合いに応じてくれない、離婚にはお互いに同意しているけど求める条件が折り合わずに進まない、そんなときに使えるのが家庭裁判所の離婚調停です。
離婚調停は、申し立てにかかる費用が少なく話し合いも調停委員が間に入って主張を聞いてくれるため、裁判ほどハードルが高いものではありません。
それでも、離婚という人生の一大事について話し合う場なら、緊張もするし自分の気持ちをうまく言えないこともあります。
調停室ではどんなことが起こるのか、実際に調停を経験した人のエピソードをご紹介します。
怒りで思わず取り乱し…
まずは、42歳女性のエピソードから。
「元夫と離婚を決めたのは、私に黙って借金をしていたからです。
普通の会社員だった元夫は副業としてマルチ商法のようなものに手を出しており、それにかかる資金でした。
お小遣いをねだることが増えて元夫名義の銀行の通帳を隠すようになり、おかしいなと思ってこっそり荷物を探ると出てきたのが借り入れの明細書。
驚いて問い詰めたら副業のことを白状し、『絶対に成功するから』と説き伏せようとしてきました。
『成功とかどうでもいい、私に黙って400万円も借金をしていたことがショック』と言うと、『仕事に金がかかるのは当たり前だろう。妻なら一緒に借金を返すために努力するべきだ』と言い出し、謝罪も反省もない姿に絶望しました。
実家の両親に打ち明けると『ありえない』と離婚を勧められ、元夫に『別れたい』と言ったけれど無視。
『俺に黙って実家に行くな』と憎々しげな顔で口にする夫を見てもうダメだと思い、その夜こっそりと貴重品をまとめて家を出ました。
家庭裁判所の調停は知っていたのですぐに申し立てをし、その間夫からはひっきりなしに電話がかかってきましたが、すべて無視しました。
調停では、自分の借金について『返せるとわかっていたから借りたもので、仕事絡みなのだから妻に相談する必要はない』『離婚するなんて無責任。どうしても別れたいなら借金の半分を払え』と元夫は言ったそうです。
調停委員からそれを聞いたとき、どこまでも私を下に見る元夫にこれまでの怒りが一気に爆発。『ふざけんな、勝手に作った借金なぞ知るか!
お前こそ責任を取れ!』と叫び、机を思い切り殴ってしまいました…。
呆然とする調停委員のお二人、荒い息を吐く私、換気で開けていた窓から吹き込む風、いま思い出しても本当に恥ずかしいです。
ドアが叩かれたと思ったら『大丈夫ですか!?』と書記官の人が真っ青な顔で入ってきて、それで我に返った私はもう平謝りでした。
元夫の主張について、調停委員のお二人は『家計に関係することなのだから、仕事の借金であっても妻に相談するのが当たり前』『勝手に作った自分の借金を半分払わせるのは非常識』と言ってくれたそうで、それでも抵抗していた元夫でしたが、『不成立になるなら裁判を起こす』という私の言葉を聞いて渋々離婚を決めました。
裁判になると双方の借金はそれぞれが払うと決まっている、と相談した弁護士から聞いたようです。
無事に離婚が成立していまはすっきりしていますが、調停室での暴言は本当に申し訳なかったといまも思っています」(女性/42歳/小売業)
調停では、配偶者の思いもよらない主張を聞かされることがあります。自分の前では黙っていたことでも、調停委員という第三者が入ることで口にしやすくなるのですね。
その内容があまりにも失礼でありえないものであり、ショックを受ける人は多いもの。
怒りがピークに達すると我を失ってしまうので、調停に臨むときは何を聞かされようとまずは深呼吸して落ち着くことが大切です。
暴れてしまえばそれで損をするのは自分と思い、不安なときは冷静さを取り戻す音楽や本などを待機している間に手にしましょう。配偶者の言葉に振り回されない強さが自分を救います。