労働時間ではなく成果での評価を。その先にあるのは男性も働きやすい世の中
ではそもそも、男性が作った “社会での働き方”とはなんだろう。
まず、成果に対する評価より労働時間に対する評価が上回っている雇用形態だ。正社員という雇用形態であれば月の労働時間が決まっており、成果に関わらず出社し、仕事をする。
時給であれば、時間分働かなければ対価は得られない。多くの労働時間があれば多くの仕事をこなせる、そんな人材が重宝されることが多いのが日本の企業なのではないだろうか。
このことからわかる通り、労働時間が十分に取れる人材…すなわち休まない人材を求めるのが当たり前だった。
これを女性が働きやすくするために変えるのであれば、人材に対する評価を仕事量や労働時間ではなく成果で評価するということが必要なのではないだろうか。
多くの労働時間によって多くの仕事をこなすことがよいという評価の基準がある結果、長期のブランクや定期的な休みを必要とする女性が働きにくくなっていたのであれば、仕事における評価の基準を改善することにより、休みを取らなくてはならない状況であっても確実に仕事での評価を得られる。
そして、これを叶えるためには、雇用形態としての正社員が「定価で多くの仕事量をこなしてくれる人材」という考え方を変えなければならない。そうすることで正社員という働き方以外の幅広い雇用形態が世の中に広まるのではないだろうか。
“働く=フルタイム正社員”という固定概念をなくすことが目指すべきところであり、それを達成したとき、女性だけでなく男性も働き方を変えることになる。
すると、男性は余裕のある時間で家事や育児などに参加できるようになる。男性自身も余裕ができ、時間の使い方に変化をもたらすことができる。
そう考えると、「女性が働きやすい世の中」になることは男性にとってもまた働きやすい世の中になることなのではないだろうか。
私たちが生き抜いてきた仕事における既存の社会は、女性にとっても男性にとっても決して働きやすいものではなかったはずだ。
男性自身も、常識とされている働き方に違和感を覚えていることもあるはず。女性が働きやすい世の中にすることは、男性が働きにくくなることではない。男性も女性も働きやすくなる変化をもたらせるものなのだと筆者は考えている。
女性が働きやすい世の中を作るための根本的な課題
22歳のころ、なりたかった姿は“男性が作った社会を男性と同じように生き抜き、女性でも同じことができることを体現した女性”だった。
けれど、その姿を見せることで働く女性が増えるということは、女性が働きやすい世の中を作るのではなく、男性のように働ける女性をどんどん増やすことと同義なのであると気づいた。
それを身をもって学んだ私は、働き方を変えるという選択をした。
自分自身の持ち味や技術を生かしたセラピストという仕事を選び、業務委託や個人でのお客様を抱えながら、ライターの案件などもやっている。
もちろん、ここに至るまで順風満帆とはいかなかった。好きなことで食べていくなんてそう簡単にはいかず、日払いのバイトをして身体を壊したり、一旦契約社員になったけどコロナ禍で休業になったりと踏んだり蹴ったりの時期もあった。
でも、私自身の背骨に通った根拠のない自信だけはあったのだ。
それは、「自分の出した成果によって仕事ができるようになれる」ということだ。
会社の歯車となるのではなく、成果をあげることで仕事を与えられるようになれるという自信とそれに伴う“努力のやり方”を学んできた。
それは、私の身近な人の姿であったり目指してきた場所がそうであったりと理由はざまざまだが、それらは私に対する“教育”にすべて結びついたのではないかと思う。
いま現在でも、業務委託や個人の取引に与えられる評価としての賃金は決して高くない。前にも述べてきた日本の労働における評価の価値観が労働時間に対する労働量であるのが大きな理由であるが、その背景にあるのは「個人の性質や特技によって仕事を身に着けさせる教育」がされていないことも大きな理由の一つなのではないだろうか。
日本には個人の特性を伸ばすための努力のやり方、技術の見つけ方を知らずに社会に出て労働力を提供している人が多い。
これが労働時間における労働量を評価することにつながり、働き方がいつまでも見直されず、結果的に女性が働きやすい世の中になることを阻害しているのではないだろうか。
日本における男女という性別での区別より根深い問題は、「個人に焦点を当てず、大きな塊として人を扱っている」ということだ。
女性が働きやすい世の中を作るには、教育という段階で個人に焦点を当てられるようになることが、働き方の仕組みや働く人材を変えられ、結果的に女性も男性も働きやすい世の中になるのだと私は考える。
遠くはない未来には仕事がAIに取られるようになる時代がやってくる。いま、私たちに向けられた「女性が働きやすい世の中にする」という課題は、男女という枠組みに関係なく、そんな時代に対応できる人間を育てるということなのではないだろうか。
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