私抜きで実家に帰る彼。疎外感を感じる女性
ため息が出たのには理由がある。私の結婚の場合は、結婚を決めたところから彼と両親の価値観のすり合わせを始めたからだった。
環境や育ち方が違う私たちはお互いの違いに惹かれあったものの、その違いでぶつかり合った。だからこそ、両親と彼が合わないところがあるのは当たり前で、実際に母と彼は大げんかしたこともあった。
それでもいまでは普通に家族で出かけることもあるし、二人は仲良くやっている。けれどそれに甘えていては、きっとまた何か問題が起こるに違いない。それだけはずっと肝に銘じていることだったからだ。
もうひとつのパターンは、男女も状況も180度異なるものだ。
3年以上担当しているお客さまで、パートナーとの付き合いを同棲のころから伺っていた女性。おっとりとした方でパートナーと仲睦まじい様子も伺ってきた。
でも一つだけ問題があるのだという。パートナーがすぐに実家に帰りたがるということだった。
彼女が出かけるたびに「じゃあ俺は実家行ってくるわ」と電車で3駅離れた実家へ帰るそうだ。ご両親と仲がいいのはわかるけれど、彼女と一緒のタイミングで帰ることは少なく、いつも自分ひとりで帰るため疎外感を感じるらしい。
結婚における考え方はさまざまだが、彼女は相手の両親も家族になったという意識が強い。だからこそ、自分がいないタイミングで家族の時間を過ごされるのは確かに寂しい気持ちになるのかもしれない。
でも意外なことに彼女はそれをパートナーに伝えると、「気を遣っていた」と言われたそうだ。
彼は彼なりに、実家の両親のことも気にかけつつ彼女の負担にならないようにとひとりになったタイミングで実家に行っていたのだった。
その話を聞いて以降は、ふたりで彼の実家に出向く機会も増えたという。
この二つのパターンをみて、義実家との付き合い方に「普通」や「一般的」なんてことはないということがわかるだろう。
テンプレートとしての「嫁姑問題」や「義実家が嫌い」なんてことと同じくらいに、「義実家が家族として受け入れてくれない」ということや、彼女のような勘違いをして悩んでいる人もたくさんいるはず。
私自身も彼女と同じく、義母との関係に悩んだ時期もある。
男兄弟しかいないパートナーのお母さんに娘がいる楽しさを知ってもらいたいと連絡を頻繁にしていた時期があった。
でもそれは、義母にとってプレッシャーであったようで、義母がいる地方に出張になったタイミングで食事の誘いをしたら断られたことがあった。
そのことにはむかっとしたし、どこかで「こっちの誠意を無下にされた」と思った。けれどそれはタイミングや時間の問題であり、付き合いが長くなったいまでは二人で長電話をする仲にまでなった。
「義実家に受け入れてもらえていないのではないか」という悩みも、「義実家の過干渉がいやだ」という悩みもどちらも結婚において当たり前に浮かぶ悩みなのかもしれない。