準備とこだわり
春のはじめのころ。式場を決定し、彼女の誕生日がある秋のはじめに撮影の予約を取りました。
次は決定から撮影までの間に撮影の内容を詰めていきます。ウェディングフォトを撮影した際は、年齢的にもいまほど収入はなく、お互い趣味に打ち込むタイプだったため、予算は潤沢ではなくあまり余裕がない状況。
幸い彼女は結婚式やウェディングドレスに憧れがあまりない…とはいえ、ドレスくらいもっとお金をかけてこだわってあげればよかったと思いました。
ふたりでのドレス選びはとても楽しかったけれど、そのことはやっぱり少し悔しくて。もう少し幅広いデザインから選ばせてあげたかったなといまでも思います。
予算をかけられない分、式場のセットプランの組み合わせそのままにならないよう、アクセサリー類や小道具を工夫しました。
実際式場のセットプランでは、あまり予算をかけられない場合、アクセサリーやティアラはドレスと同様に選択肢に限りが出てきます。
そこで、ティアラは結婚指輪の購入特典でレンタルできるそのブランドオリジナルのものに変更。アクセサリーはウェディング用アクセサリーの卸売の店舗に足を運んだり、手づくりのものを混ぜることでこだわりました。
そのころ、写真撮影やフェスなどで流行っていた花冠は手づくり。当時裁縫にハマっていたのでウェディングベアの衣装も手作りしました。
写真だけではありますが、僕たちにとっては結婚式と同じくらいこの撮影は一大イベントということで、彼女へサプライズプレゼントを用意したりもしました。
形に残せてよかった
当日、ヘアメイクと着替えを終え彼女が選んでくれたタキシードに身を包み、一足先に撮影をするチャペルへと入りました。
すると先ほどメイクをしながら話をした情報から、プランナーさんがサプライズで僕と彼女が大好きなディズニーのラブソングをかけてくれたのです。
それに感激していると、支度を終えた彼女が登場。念願の彼女のドレス姿は本当にきれいで、まだ一枚も撮影をしていない段階で「撮ることにしてよかった~!」と心から思いました。
大好きな曲も相まって涙があふれそうになったのですが、まだ撮影前なのでグッと堪え、いよいよ撮影。
担当してくださったカメラマンはナイスミドルでおちゃめなおじさまで、緊張していた僕たちを終始和ませて笑顔で撮影してくださりました。
こっそり準備していたプレゼントは、式場で事前に預かってくださり、渡すタイミングなど段取りを相談し、手伝ってもらいました。おかげで受け取ってくれた彼女だけではなく、渡した僕にとってもいい思い出になりました。
挙式ではなかったのに、抜かりなく演出もしてくれたプランナーさんをはじめ、ヘアメイクさんやカメラマンさん、式場と繋げてくれたウェディングサービスに感謝しています。
それまではルームシェアをはじめても恋人として彼女のことを考えていましたが、ウェディングフォトの撮影を通じてパートナーや家族へとお互いの関係性の捉え方にポジティブな「変化」が生まれました。
挙式にこだわらなければ、ウェディングフォトの撮影もふたりにとってパートナーシップを育くんでいくなかでの一つの区切りになっていると感じています。
いまはパートナーシップ制度を取り入れる自治体も増えたものの、まだ同性婚が施行されていない日本では、“入籍”のない同性カップルはその分パートナーシップを続けていくなかで関係性の明確な変化を感じにくい場合も少なくありません。
そんなときふたりの関係性の区切りや新たな門出として、ウェディングフォトの撮影はとてもいい機会になるのではないでしょうか。
それは異性同士のカップルであっても同じで、挙式ほど規模は大きくなくてもこれから変化していく関係性の記録として撮影しておくという考え方もあります。
結婚やパートナーシップの宣誓、またはこれからの人生を一緒に歩んでいこうと決めたそのときのふたりの姿を残せるのは、そのときしかないのですから。
その時期のふたりの姿を残すことで、いつか振り返ることもできる。思い出は多いに超したことはありません。
彼女も撮影をしたときの思い出をとても大切に思ってくれていて、結婚式やウェディングドレスに憧れはなかったけれど撮影してよかったと話してくれました。それだけで僕も撮影してよかったと感じています。