「相手に何も望まない」ことも自分のため(女性/40歳/無職)
「元夫とは離婚調停で別れることができましたが、いまでも覚えているのは女性の調停委員の言葉です。
元夫は、収入は高いけれど気に入らないことがあると壁を殴ったりドアを大きな音を立てて閉めたり、こちらを威圧してくるのが本当にストレスで、専業主婦の私は怯えながら暮らしているうちに胃潰瘍になり、それを見た両親から離婚を勧められました。
明らかなモラハラですが、調停で元夫は自分のしたことをそのまま認めて『腹が立てば誰でもそういうときはあるでしょう』と反省もしない様子で、背筋が凍るような思いでしたね。
50代くらいの調停委員のふたりは、私が病気になった原因は『自分が弱いから』と言い切る元夫とどう向き合うか考えている様子でしたが、女性のかたが『モラハラが理解できない人に何を言っても通じません。そこにこだわるとかえって相手方の態度が頑なになる可能性が高いです』と、きっぱりと口にしました。
元夫は離婚については『条件しだい』と言っており、自分のしていることがモラルハラスメントでそれが原因で離婚になることが嫌なようでした。
私は、元夫に私のつらさを理解してほしい、謝罪してほしいという気持ちが強かったのですが、そればかり主張していると離婚が遠のくことは確かに実感しました。
『相手に変わることを望んでも、かなわなかったら余計につらくなりますよね。いまは離婚の成立を考えましょう』と静かに話してくださった調停委員の女性には、いまでも感謝しています。
元夫にはその後モラハラの話はやめ、平等に財産分与することをメインに話を進め、10カ月程度かかってやっと離婚が成立。
元夫には二度と会いたくないですが、調停委員の女性の言葉は、何が自分のためなのかを考えるよいきっかけをくださったと思っています」(女性/40歳/無職)
「モラルハラスメントを理解できない人」はたしかにいて、胃潰瘍になろうとも当人の弱さで片付けてしまう姿を見れば、何を望んでも無駄ではないかと感じます。
そこにこだわって話がこじれていくより、目的が離婚ならその成立を目指すのが自分のため。
妻の気持ちを理解しながらも反省や謝罪を諦めることを勧める調停委員の姿は、「妻にとってのよりよい現実を見る目」があるのではないでしょうか。
それを受け入れる勇気が、新しい人生の一歩を踏み出す大切な力になります。
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