強気がアダになる(女性/35歳/総務)
「夫のモラルハラスメントに耐えられず離婚を決めたのですが、『離婚してほしい』と伝えたら次の日に夫の兄が出てきて財産分与はしないなど勝手に決めようとしたため、離婚調停を申し立てました。
離婚を切り出したときにアパートを出ていくと言っていた夫は『やっぱりここに住む。離婚したいのはお前だからお前が出ていけ』と冷たい口調で言い放ち、同じ市内に住む両親に連絡して実家に身を寄せました。
申し立てをしたときと住所が変わったため、相手方の夫には非公開の約束で変更し、夫から着信があったときは父に対応をお願いしました。
幸い子どもがいなかったため身軽に動けたのですが、夫だけでなく義実家まで私の敵になったと思うとストレスで食欲がまったく出ず、体調を崩してしまい大変でしたね…。
調停は、ライターをしている友人が教えてくれて知った制度でしたが、家庭裁判所では夫と顔を合わせないで済むのが本当に助かりました。
調停委員のかたから夫の兄が調停室に入れろと言い出して大変だったと聞きましたが、自分のやっていることの異常さに気がつかないのは夫と同じだなと思い、怖かったですね。
夫のモラハラは、収入の低い私を『俺と同じくらい稼げない頭』と馬鹿にしたり、家事をいっさいやらないのに『誰のおかげで生活できていると思っているんだ』と何回も言ってきたり、とにかく精神的に追い詰められる言葉が多くて、それらを調停委員のおふたりには伝えましたが、夫の主張は『そんな言い方はしていないし、被害妄想が強いのではないか』という予想通りのものでした。
録音などの証拠がないのも苦しく、夫側は『離婚はするが財産分与をなしにするのが条件』と強気な姿勢で、それは難しいという調停委員の言葉もまったく受けつけない状態でした。
そうしていればいままで通りに私が折れるだろうと思っているのがよくわかり、悔しくてたまらなくて、考えた末に不成立をお願いしました。
離婚調停と同時に婚姻費用分担請求も起こしていたため、別居中であっても私より収入が多い夫は生活費を払う義務があります。
裁判所が用意した算定表の額に夫はかなり抵抗したそうですが、義務であるなら拒否はできず、こちらの調停はすぐに支払いが決定しました。
離婚調停は不成立になったので離婚の話は進まず、でも婚姻費用は払わなければいけないという状態になった夫は、こちらの予想通り今度は自分が申立人となって調停を起こしました。
自分で申し立てたからには夫は離婚の条件についてある程度の譲歩は考えなければならず、最初の強気な姿勢がアダになったのを感じますね。
一回目の期日はまだですが、今度は対等に話ができるよう、意思を強く持って臨むつもりです」(女性/35歳/総務)
人間性の底が出るのが離婚調停だなと感じるケースがありますが、モラルハラスメントを日常的に行いそんな自分に違和感を持たない人間ほど、公の場では非常識さが表に出るのを感じます。
こちらのケースでは、モラルハラスメントについて一切を否定する割に家事をしないし妻をいたわらない自分を正当化する異常さがありありと伝わってきました。
ですが、家庭では強気でもそれを裁判所に持ち込むと不利になる流れを作り、結局は自分が損をする結果に。
次に動く側になれば第三者からの説得は免れず、譲歩を求められるのが離婚調停です。
配偶者を大事にしない人が、調停の場でも有利に立てるという現実は、実際はそうないのではと感じます。
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