2015年に渋谷区がパートナーシップ制度を施行後、日本各地の自治体での導入も年々増加。
なかでも首都である東京都が都として導入している「東京都パートナーシップ宣誓制度」は、国としてのパートナーシップ制度や同性婚の導入の足掛かりになるのではと考えられています。
今回、そんな「東京都パートナーシップ宣誓制度」を、兼ねてから生活をともにしていた身体の性が同性のパートナーと申請した筆者が、実際に申請した際の感想や申請に伴い起きたことを実録レポートします。
なぜ申請しようと思ったのか?
渋谷区でパートナーシップが施行された2015年。僕とパートナーは今後の人生を夫婦同然に過ごしていくことを誓い、翌2016年にその記念としてウェディングフォトを撮影しました。
残念ながら当時住まいを構えていた自治体ではパートナーシップ制度は導入されておらず、パートナーシップ制度の申請はかないませんでした。
パートナーシップ制度は、現状どの自治体においても法的効力をもっておらず「同性婚」ではありません。
それなのにパートナーシップ制度を申請したいと考えた理由は、“もしも”への備えをしたかったから。
万が一僕かパートナーのどちらかの身に何かあったとき、病院で家族として扱ってもらえたり、いま暮らしている住居で生活できなくなった場合公営住宅に家族として居住申請が可能といった、ふたりで暮らしていくなかで起きるかもしれないリスクを少しでも回避したいという割と現実的な理由です。
もちろん結婚ができないのならば、せめて現状婚姻に一番近い状態のパートナーシップ制度を利用したいという想いもないわけではありません。
異性愛者が愛する人と婚姻関係を結ぶようにお互いを思いあっているからこそ、2022年11月に東京都パートナーシップ宣誓制度が施行開始されてもすぐには申請せずに、ふたりの大切な記念日であるウェディングフォトを撮影をした日と同じ日付に東京都パートナーシップ宣誓制度を宣誓することにしたのです。
申請について
東京都パートナーシップ宣誓制度の概要は、下記の通り。
東京都パートナーシップ宣誓制度(以下、「宣誓制度」といいます。)とは、パートナーシップ関係にあるお二人からの宣誓・届出を、都が受理したことを証明(受理証明書を交付)する制度です。
本制度により、性的マイノリティのパートナーシップ関係にある方が、日常生活の様々な場面での手続が円滑になるほか、例えば都営住宅への入居申込等、新たにサービスが受けられるようになります。
東京都は、今後、利用可能なサービスを広げるため都内自治体や民間事業者とも連携・協力を図っていきます。
併せて、都民の皆様に多様な性について正しい理解と認識を深めていただけるよう啓発に取り組んでまいります。
引用:東京都総務局人権部 東京都の人権施策「東京都パートナーシップ宣誓制度」
申請をするには、下記の5つの条件を満たすことが必要です。
- 「双方又はいずれか一方が性的マイノリティであり、互いを人生のパートナーとして、相互の人権を尊重し、日常の生活において継続的に協力し合うことを約した二者である」と宣誓したこと
- 二人とも満18歳に達していること
- 二人ともが事実婚を含む配偶者がいないこと、かつ別の方とパートナーシップ関係にないこと
- 二人が、直系血族、三親等内の傍系血族又は直系姻族の関係にないこと
- 双方又はいずれか一人が都内在住・在勤又は在学であること
5は、届出の日から3カ月以内に都内へ転入予定の場合も含まれるとのこと。
ほかの条件に関しては、申請するカップルが海外で同人と同性婚をしていたり、パートナーシップ関係のために養子縁組をしていたりしていたことにより4の関係にあたる場合は制度の対象となるそうです。
僕と彼女を当てはめてみると、この条件を満たしていたので申請に問題はなさそう。
婚姻届の記入・届け出で申請が終わる異性同士の婚姻と異なり、パートナーシップ宣誓制度の申請にはいくつか準備が必要なものがあります。
申請するふたりとも必要な書類などは、
- 婚姻をしていないこと等を証明する書類(戸籍抄本、独身証明書、都内区市町村発行のパートナー シップ証明書など)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、旅券、運転免許証、在留カード等顔写真付きの証明書)
- 本人の顔写真、本人確認書類とは別の顔写真
上記とは別に、双方又はいずれか一人が都内在住・在勤又は在学であることを証明するための書類や、通称名の記載を使用する場合、子の氏名等を記載を希望する場合はそれぞれ該当する書類の提出が必要です。
僕と彼女は、
- 戸籍抄本
- 運転免許証
- 顔写真
加えて、都内在住のためそれを証明する住民票の写しを用意しました。
戸籍抄本は本籍地の市役所などから取得することができ、本籍をおいている市役所から郵送で取り寄せることが可能です。
市役所のホームページから申込書類をダウンロードして出力し、返信用封筒を添えて郵送。
僕の場合は発送からちょうど一週間ほどで書類が手元に届きました。取得のために帰省をする必要がない分、取得に時間がかかるのであらかじめ余裕を持って取り寄せることをおすすめします。
戸籍抄本取得の際にドキッとした点がひとつ。取得のための申込書類には戸籍抄本を使用する用途を具体的に書く欄があり、パートナーシップ制度を申請する旨を書かなければなりませんでした。
そもそもで市役所にも守秘義務があると思いますし問題はないのでしょうが、もしも自分の家族や知人が働いていてパートナーシップ制度を利用すると言えない場合、本籍地を移さないと申請は難しいかもしれないと感じました。
東京都パートナーシップ宣誓制度は、Webで申請から承認後の証明書発行までを行うことが可能であることも特徴のひとつ。
申請をするにはまず、各々「パートナーシップ宣誓制度システム」にユーザー登録。「新規申請」としてパートナーシップ宣誓制度を申請します。
申請には、システム登録時に発行されるパートナーシップIDがお互いの分必要になるので相手にパートナーシップIDを教えておきました。
必要事項を入力し、必要書類をアップロードして提出します。必要書類はスキャンまたは撮影した写真(鮮明なもの)で、pdf、jpg、jpeg、gif、png、heicのいずれかの形式の1ファイルあたり7MBのもの用意。
たまたまスキャナーを持っていたのですが、ない場合はどうするのでしょうか?
顔写真は撮影した写真データをスマホに送ってくれる証明写真機の利用も考えたけれど、縦横比の指定の記載がなかったのでスマホのカメラで撮影したものを使用。
申請から土日祝日を除いた10日以内に承認され、僕と彼女の場合は5日かかりました。
実は申請の1週間後、カメラを趣味にしている友人に記念写真を撮影してもらう予定があり、証明書を入れた写真立てと一緒に撮ってもらおうと考えていたのですが、思ったよりも承認まで時間がかかると知ったのは申請の数日前。
なんとなく「Webだし承認も早そう」なんて気楽に構えてしまったのです。
「間に合わないじゃん!」と慌てて、ときすでに遅し。間に合ったらラッキーくらいに考えて、撮影の小道具からは一旦外して考えることにしました。
最終的にはギリギリ間に合ったのですが、かなりハラハラしたので記念の撮影や挙式、パーティーなどを予定している場合は早めに申請した方がよさそうです。
申請の状況は、「パートナーシップ宣誓制度システム」から随時確認することができ、いまかいまかと何度もページを覗きに行ってしまいました。
ちなみに、申請は双方の「パートナーシップ宣誓制度システム」から新規申請が必要で、僕はどちらか一方でいいのだと勘違いしてしまっていたので、念のため注意しましょう。