経験していないことは、理解しにくい
奥さんはその後も育児に奮闘し、子どもが幼稚園入園くらいの歳になると、さすがにそこは扱いに慣れている年齢で随分子育てがしやすくなったようです。
「当時は意思疎通が取れない赤ん坊を前に、本当にどうしていいかわからなかった」と言っていたので、幼稚園児を相手にしていた彼女は「しゃべれない時期の子ども」というのが想定外だったのかもしれません。
そんなこんなで難所を乗り越えた奥さん。すくすく育つ孫の行事には夫も招集がかかり、幼稚園の運動会のじいじ枠として運動会に参加したり、じいじ業を張り切っています。
そしてあのときの発言で何かを思い直したのか「奥さんの育児が大変だろうから、俺が留守番してあげようかな」とか「大変だろうから旅行に連れて行ってやろうかな」など、奥さんへの気遣い発言が増えてきました。
孫が大きくなってどんどん聞かん坊になっていくのを見て、「いやぁ、ありゃ大変だなぁ」なんて言ってる夫。
いやそばにいる私も相当大変だったんですけど、というのに全然気づいていないようなので「それ、うちの息子が小さいころに気づいてほしかったんですけど」と言ったら黙ってしまいました。
静かになったついでに「いまも気づいてないかもしれないけど、子どもの塾とか進路とか、学校に行きたくないというときのメンタルケアとか、全部わたしがやってるんですけどね。いまも大変ですよ」と付け加えておきました。
それ以来なんとなく、夫が食事の後片付けをやってくれる回数が増えた気がします。
わたしもことあるごとに「あ―大変!家事に育児に仕事に、頭がいっぱいだわ!忙しいから助かるわー!」と大げさに口に出すようにしています。
いまは子育てにちゃんと参加する男性も増えてきているようですが、まだまだ「育児は他人ごと」な男性も多いと思います。
経験していないことはなかなか身をもって理解しにくい。わたしだって夫の会社勤めや、家族を養うプレッシャーは身をもって実感することはできません。
「わたしの気持ちなんてわからないでしょ?」「俺の気持ちなんかわからないだろ?」平行線で大ゲンカになったことも数知れず。
うちの場合は、そんな夫が長男夫婦や孫といった、ちょっと距離を置いた形で育児を見ることで、気づけたのかなと思います。
時代が変わって夫の育児参加が当然になれば、少しでも育児に対する理解が深まるかなぁと思います。
とはいえときどき、抱っこ紐で赤ちゃんを抱えている男性が、赤ちゃんが泣きわめいているのに無視してコーヒー飲んでいたりするのを見かけると「おいっ!座ってないで抱っこして、揺らしてあやすんだよっ!」とツッコミを入れたくなるシーンに遭遇したり、育児のレベルというのは差が多少ありそうな気もしますが…。
息子が大人になるころには、もっと育児のあり方も変わっているのかなと思います。
子育ては大変だけれど、やっぱり自分の成長につながったなと思うこともたくさんあるし、なにより子どもという大事な存在に出会えたことは人生の宝。
だからこそ、夫婦で協力して育児をする空気感がもっと広まればいいなぁと思います。
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