今回は最近話題の「ソフト老害」について、by themがアンケート調査を実施。
集まった体験談からソフト老害にならないためにできることを考えました。
「ソフト老害」とは?
「ソフト老害」という言葉が知られるようになったきっかけは、人気放送作家である鈴木おさむ氏の著書『仕事の辞め方』。
鈴木さんは著書のなかでご自身の体験を踏まえながら、これまでの「老害」とされる年齢よりも若い40代であっても起こり得るものとして、従来と区別とした「ソフト老害」と表現しました。
40代になり、職場で上と下の間に入りバランスを取るポジションで、自分は、上のプライドを傷つけず、下の意見をうまいことまとめたつもりでも、下の世代から見たら、その行動が老害2見えてたりするということに気づき、それをソフト老害と名付けました。
自分含めて。…— 鈴木おさむ (@suzukiosamuchan) October 29, 2023
鈴木さんが「ソフト老害」としての自身に気づいたきっかけは、後輩からの告発。
制作会議などの場面で、鈴木さんは後輩の制作メンバーと上の立場のプロデューサーや演出家たちの間に入ることが多くなり、その際後輩たちが必死に考えてきた企画やVTRを自身の一言で修正したりなくしたりしていたことがあったそう。
後輩本人ではなく、鈴木さんの意見が上の立場にあるプロデューサーや演出家たちに尊重される状況に、後輩は相当な憤りを感じてしまっていたとのこと。
後輩はその後抱えていた憤りをYouTubeの企画番組を通じて、告発する映像の制作に出演しました。
公開前に本人から鈴木さん宛にその旨の連絡が入り、鈴木さんはそのときはじめて自分はずっと「老害」の被害者だと思っていたけれど、いつのまにか加害者側に立っていることに気づいたそうです。
鈴木さんはFNNの取材で、「会社と若い人たちの間の年代の人が、よかれと思ってやってしまっているバランスを取る行為によって、結果、自分より下の世代の意見をつぶしたり、却下してしまったりしている。40~50代の頭ぐらいが、僕的にはソフト老害といわれるゾーンに入ってくる」と語っていました。
実際に「ソフト老害」だと思われているのはどんな人?
では、実際「ソフト老害」と感じられるのはどんな人なのか。
by themが実施したアンケートに寄せられたエピソードを4つのパターンに分けてご紹介します。
「否定から入る」
「私が老害だと感じるのは、同じ部署で働く42歳のパートさんです。彼女は私が本社から異動した部署に開業当初からいる、いわゆるお局的な存在でした。
私が本社で使用していたマニュアルに沿った作業を進めていると、『うちでは昔からこうやってやっているから』『前の社員さん(私の前任)に聞いてずっとこのやり方でやっている』と、店舗オリジナルのやり方を曲げず、聞く耳も持ってくれません。
このようなことが続き、仕事がやりにくいなと思っていると、『あなたは私のことお局や老害だと思ってやりにくいかもしれないけど、けしてあなたと喧嘩がしたいわけではない』と言ってきて。本心で言っているとも思えず、同情を誘うためなのか相手の意図が読み取れず苦労しました」(宮崎県/29歳女性/会社員)
「ポジショントーク」
「43歳男性、同じグループの上長で、頼んでもいないのに仕事を教えたがる癖がある人です。
上長と私は隣席だったので、いつも『ねえ、これ知ってる?』と、私が知らない仕事・情報があると教えてきました。
最初は世話好きな人なのかなと思っていましたが、次第にエスカレート。私がどんなに忙しいときでも話しかけてくるようになって…。
しかも、話がダラダラダラダラととても長い。情報を伝える順番もめちゃくちゃで、最後は本人でも何を言いたいのかわからなくなる始末。
私がどんなに嫌そうな顔をしていても、構わずに話してきました。人の気持ちがわからない人って、こういう人のことを言うんだなと思いました」(東京都/28歳男性/会社員)
長々と持論を展開
「48歳の男性上司は、本人は丁寧に指導しているつもりかもしれませんが、仕事のやり方を質問すると持論を展開して必要以上にあれこれ話します。
こちらが聞きたいことだけ教えてくれれば事足りるのに、話も長いので、無駄に時間を費やしてしまうんです。持論をねじ込むことはやめてほしい」(東京都/25歳男性/会社員)
幸せの価値観を押し付ける
「40代女性、会社の上司です。普段は物腰が柔らかく、朗らかな方なのですが、私が未婚であることを知ると、『結婚はしたほうがいいわよ、子どもも早いほうがいいし!』と何かにつけて言うようになりました。
その上司の同僚の方と3人で話しているときに、『〇〇(私)さん、結婚したほうがいいわよねえ、いい人いないの?』『そうよ、タイムリミットきちゃうし』と話題にされ、かなりイライラしました。
すごく嫌なことを言ってくるわけではないけど、こちらのプライベートのことにズケズケ踏み込んできてチクチク言ってくるところが老害っぽいと感じました」(神奈川県/29歳女性/会社員)
「ソフト老害」に対する若者からの意見
「当時はそれで通じたかもしれないけど、時代は変わるもの。時代に沿った考え方も取り入れた方がいいと思います」(北海道/27歳女性/会社員)
「『俺がその年齢のときはー』とか言うけれど、時代も生き方も性格も違うので、過去に取り残されているようでかわいそう」(沖縄県/30歳男性/会社員)
「そもそも老害という文字から、老人じゃないと自分は違うと勘違いしてしまうケースが多い。被害者である若者から見れば自分のほうが年を取っているので、その時点で老害であることを認識してほしい」(埼玉県/28歳男性/会社員)
「私の下に部下ができたとき、こんな上司にはならないようにしようと思いました」(長崎県/27歳男性/会社員)
「いろんな年代の人にも言えることですが、相手の気持ちと状況を見る力をつけた方がいいと思います」(埼玉県/29歳男性/会社員)
「ソフト老害」にならないためには?
悪意の有無に関わらず自分よりも若い世代の頑張りを抑えつけたり、結果として邪魔をしたりしまうソフト老害。
鈴木さんのように、ソフト老害は自分ではなかなか気づけず、厄介。
多くの人が老害と言われるような人には「こうはなりたくない」と思っているはずなのに、40代やもしくはもっと若い世代で意図せずそうなってしまわないためにできることはないのでしょうか。
若き世代からはじまる「老害」について、千葉商科大学准教授で社会学者の常見陽平さんは、ソフト老害にありがちな避けるべき話題を、過去の話をやたらと引き合いに出す昔話の「M」、武勇伝を語るなど自慢話の「J」、不用意なお小言を言ってしまう説教の「S」をとって「MJS」と表しました。(参考:FNN)
ソフト老害にならないようにするには、これら「MJS」の話題を避けるとともに、若手を理解していると思い込まないことも大切。
後輩などの若手に対して未熟なところばかりを見ずに、いいところを探したり、若者からも教えてもらおうという姿勢を心がけましょう。
若手に対して経験の基づいたアドバイスをする際は、「俺はお前の気持ちをわかってるよ!」など理解している風でいたり、過去のやり方を押し付けるのではなく、「参考になるかわからないけど…」など謙虚に伝えるようにするといいかもしれません。
「ソフト老害」に出会ってしまったら?
では「ソフト老害」に出会ってしまったらどうしたらいいのでしょうか?
ソフト老害への対応は極力衝突を避け、「スルー推奨」が最善と言われています。
これは感情的な衝突を避け、自分の心身のエネルギーを本来集中させるべき仕事などに集中することで、感じるストレスを最小限にするという効果があるそうです。
ソフト老害の感情を逆なでしたり煽ったりせずスルーすることが当たり前になると、ソフト老害の行動が及ぼす周囲への影響を最低限に抑えられ、職場の雰囲気がポジティブに変わり環境の改善にも。
スルーすることも容易いものではないことから、自分の感情をコントロールする自己成長のための訓練にもなります。
もちろん場合によってはソフト老害との前向きな対話やフィードバックも必要であり、適切な状況判断や対応の選択が大切ですが、ソフト老害への対応がスルー推奨といわれる理由には、自身の心と身体を守り職場環境を健全に保つ目的があるのです。
「ソフト老害」にならないように…
筆者も「ソフト老害」という言葉を初めて目にした瞬間ドキッとしたひとり。
社会人になったころから、いつか来る未来として歳を重ねたときに「ああはなりたくない」なんて感じる老齢層のイメージこそが「老害」でした。
20代の後半に差し掛かったころ、急に仕事の歯車が以前よりもスムーズに動くようになったと感じたことがありました。
「後輩たちが気を使って協力してくれているからだな」と当事は感じたけれど、もしあのとき自分の力だと勘違いしていたら30代半ばのいまごろは、確実にソフト老害だと周りから言われていたのではなんて考えてしまいます。
いま自分がソフト老害ではないという保証も現状ないので、ひたすらならないように気をつけていきたいです。
- image by:Shutterstock
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
- ※本記事は個人の特定を避けるため、一部情報にフィクションがあります。