新型コロナウイルス感染対策としてアメリカの各都市で「外出禁止」が発令されたとき。あと1カ月ほどで失効してしまう、個人のドライバーズライセンスの更新の時期と重なってしまいました。
「外出禁止令が発令したのだから、免許更新もおそらく延長されるはず」と高をくくり様子をうかがっていたものの、調べるとどうやらDMV(Department of Motor Vehicle<自動車管理局>)が閉まるということはないようで、泣く泣く更新に行く羽目になりました。
アメリカでは「無事故無違反」の場合、5年周期で更新された免許が郵送されてきます。住所変更などがあればインターネットで申請し、特に変更がなければ、DMVに行かずして更新された免許を手にすることができるのです。
だから私が最後にDMVに行ったのは、10年前。タッチパネルで書類に記入する際、当時と変わっている項目に気がつきました。個人情報の「性別」の欄です。
目に見える定義で断定できない「性」
性別は、「MALE(男性)」「FEMALE(女性)」「non-binary gender(ノンバイナリ―・ジェンダー)」の3つから選択できるようになっていました。私が住むカリフォルニアでは、2019年の1月からこの法律が施行されていたようです。
「ノンバイナリー・ジェンダー」とは、自身のジェンダーを「男性、女性のどちらかに限定しない/どちらでもある」とし、男女に分けるバイナリー(二分法)に当てはまらないことから「第3の性」といわれています。
日本では「Xジェンダー」と呼ばれることがあり、まだ知らない人の方が多いかもしれません。よく耳にするようになった「トランスジェンダー」とは、少し違います。「トランスジェンダー」は、身体的な性と性自認(心の性別)が一致していないこと。
対して「ノンバイナリージェンダー」の人は、身体と心が必ずしも別の性別というわけではなく、男性女性どちらかに限定しないor両方に当てはまるということ。「トランスジェンダー」と「ノンバイナリ―・ジェンダー」は近い言葉ではありますが、違う意味なのです。
女性用の洋服が好きだけど身体・性自認も男性で、どのような人を恋愛対象・性愛の対象にするのかという「性的指向」においては異性(この場合は女性)という人や、またこの逆…と、さまざまなグラデーションが重なりあう方もいる。
考え方や趣向、指向というものは、見た目ではわからない抽象的なものです。その抽象的なものを、目に見える定義で「性別」として断定することは、とても難しいことだと今更ながら理解できます。