毎年ホワイトデーになると思い出す。伝えられなかった、私の気持ち。あのとき無理やりにでも返事ができていたら、私の未来は変わっていたのだろうか?
「義理チョコだから」それが私の精一杯だった
昔からお菓子づくりがどうも苦手で、バレンタインの友チョコですら手作りした記憶がない。だいたいコンビニでチョコの詰め合わせを買ってきて、100円ショップの袋に入れて渡すのがお決まりだった。だから、そんな私がチョコを作るなんて一大事件だったと思う。
「これ、義理チョコだから!」
高校2年生のとき、ずっと片思いしていたクラスメイトの和也に、手作りチョコレートを渡した。少し不格好なブラウニー。母親の手を借りながら頑張って作り上げたブラウニーを「義理チョコ」なんていうのは、自分でもちょっとしんどい。「こんなに頑張ったんだから、本命に決まってるでしょ!」っていまにも叫びたい気分だった。
和也は私からチョコを受け取って、嬉しそうにお礼をいってくれた。本命だって、気づかれたかな?気づいてもらえたほうがいいのにな、でも恥ずかしくて今はいえない…。
それからしばらく経って、今度はホワイトデーが近づいてきた。
「ちょっとお願いがあるんだけど、ホワイトデーのお返し選ぶの付き合ってくれない?」
私に声をかけてきたのは、同じくクラスメイトだったヨシキ。ヨシキは坊主頭を撫でながら、恥ずかしそうにそう依頼してきた。
「和也も誘ったんだけどさ、やっぱ女子の意見も聞きたくて」
ヨシキと私は家が近所で、小学校からの同級生だ。小さいころから遊んでいた仲だから頼みやすかったんだろう。正直いって「友人の助けになろう」という思いより「和也も来る」という言葉に釣られたほうが正しいのだが、私はこの誘いをもちろんOKした。
後から聞いた話だと、ヨシキに「女子の意見も必要じゃない?」と助言したのは和也本人だったそうだ。