みなさんこんにちは。韓国に暮らして14年、私は現在ソウルで留学生対象にシェアハウスを運営しています。
2022年、韓国の出生率は0.78とOECD加盟国のなかで過去最低を記録しました。(参考:ニッセイ基礎研究所)
この著しい出生率の低下は、結婚しない若者が増えているという理由もあるかと思いますが、子どもを持たない選択をする夫婦が増えているのもあるかと思います。
そのような選択をする背景には、どのような問題が隠れているのでしょうか?
物価の急激な高騰により私教育費への負担が家庭を直撃
近年韓国では、不動産価格の高騰や著しい物価の上昇が各家庭へ経済的負担を強く与えています。
ガス電気などの光熱費は1年前に比べて30%以上も上昇し、ソウル市2023年1月のガス代延未納額は、なんと114億ウォン(日本円で約11億7,810万円)に達するそうです。
そのほかにも外食費、食材、生活用品、交通費等、すべてにおいて値上げが続き、もはや「安い韓国の姿」はどこを探しても見つかりません。
そこへさらに、子どもに費やす私教育費(公教育以外に追加に支出する教育費)も家計の大きな負担になっているんです。
韓国では小・中・高校生のほとんどが何かしらの学習塾に通っています(授業が終わるころ、校門の前に塾からのお迎えバスがずらっと待機してるのは、韓国の代表的な光景のひとつです)。
コロナ禍でオンライン授業が増えたことにより、子どもの学力低下を不安に思う親たちが、子どもをコロナ禍前よりもさらに多くの塾に通わせるようになりました。
そのためか、2022年の韓国の私教育費の総額は約26兆ウォン(日本円で約2兆6,200万円)と、前年比で10.8%も上昇し、歴代最大を記録しました。
借金をしてまで私教育費を工面する「エドュープアー」
度重なる物価上昇に伴い、私教育費も高騰。なんと私教育費の上昇率は、物価上昇率の2倍にも達するとも言われています。
それでも、子どもの塾や習い事は減らせないという親たち。食費や生活費などの出費を減らし、なんとかして学費を工面しようとする「エデュープアー」と呼ばれる家庭が急激に増えているそうです。
ソウル市の高校生1人につき、月平均私教育費は93.7万ウォン(日本円で約9万4500円)と言われています。しかし、これはあくまでも平均値です。
韓国人の子どもは、大体が2種類以上の習い事や学習塾を掛け持ちしています。実際には塾を2つ掛け持ちさせて、月100万ウォン(日本円で約10万円)以上支払っているなんてことも珍しくありません。
当然、子どもが2人、3人いる家庭はその2倍、3倍の額になります。子ども2人育てると、1カ月の私教育費は200万ウォン(日本円で約20万円)もかかるのです。
お金に余裕のある家庭なら問題ないでしょう。しかし大体の家庭が夫婦共働きで、生活費を節約しながら、ときには銀行から借金までして、やっとの思いで子どもの教育費を工面してるのです。
子どもの将来のためにも、私教育にお金をかける事は必要ですが、そこまでして塾や習い事に通わせるべきなのか、疑問に思うかもしれませんね。
韓国はまだまだ学力社会。よい大学を出てよい企業に就職することが、将来苦労せず生きていける保障となります。そのために親たちは、子どもにできる限りよい教育を受けさせようとするのです。
そのような背景で「エドュープアーにはなりたくない。夫婦2人だけで金銭的余裕ある生活をしたい」と、子どもを産まないという選択肢をする夫婦が増えていることは納得できると思います。