みなさんこんにちは。飼い主さんたちが「犬を理解する」ために必要なことをご紹介している、Masumiです。
現実に起きた事件や事故、海外の犬事情など、日本では報道されないこと、私が体験したことを中心に、知っておいてもらいたいことをお話ししています。
犬たちは言葉を話せないため、人間が理解してあげないといけません。生まれたばかりの赤ん坊と同じです。
ちゃんと表情をみて、何を求めているのか、痛いのか、痒いのか、何を訴えているのか、遊んでいるのか、それとも喧嘩をしようとしているのか…。
これらを全く知らなくても、犬は簡単に飼うことができます。そして、犬の問題行動に対面すると、人はみんなこう言います。
「いきなり噛んできた」「突然襲ってきた」と。
勝手な思い込みで、どれほどの犬たちが加害者となり、噛みつき犬と言われ、狂暴な犬、馬鹿犬呼ばわりされているか…。
人間(自分)の無知を棚に上げ、犬のせいにする。だから、犬を「治そう」とする。それらが「犬のトレーニング」と呼ばれています。
本当の問題は、人間が犬を知らないこと、わかっていないこと、理解していないことにあるのです。
フラストレーションが高いのはどっち?
タイトルには「オビディエンス・チャンピオンシップ・ディスプレイ」と書かれています。「競技」です。
ここで質問なのですが、あなたはどちらの犬を飼いたいですか?
最初の方では、黒い犬と茶色の犬2匹が審査を受けております。
黒い犬と答えた人が多かったように思いますが、私が選ぶとするならば、茶色の犬です。
理由は、犬が「何」に興味を示しているか?欲求の高さ、「ドライブ」の高さです。
「ドライブ」とは、「欲求」のこと。「フードドライブが高い=食べ物への欲求が高い」「トイドライブが高い=オモチャへの欲求が高い」このような使い方をします。
モチベーションのことです。人だってモチベーションがあるからこそ、行動を取りますよね?
さてこの動画、2匹ともかなり「ドライブ」が高いのはわかります。ハンドラーが「お菓子」を手にしているからです。
この2匹を見比べたとき、どちらの犬の体がしなやかですか?
尻尾の振りはどうでしょう?体が硬いのはどちらですか?口の開き方も見てください。どちらの犬の呼吸が荒いと思いますか?
黒の方は、フードドライブが高すぎます。このことで、競技では優秀な成績を獲得することは目に見えております。
ですが、黒い犬の焦点は常に手に隠された「お菓子」にあります。ということは、飼い主の表情やサインよりも、「お菓子」を期待しているわけです。
茶色の犬も、同じように「お菓子」に対してのモチベーションは高いのが見てとれますよね?でも、よく見てください。
ハンドラーのお菓子を持っている手の位置の高さとか、体の硬さ、ハンドラーへの注意…黒い犬のハンドラーと茶色の犬のハンドラー、お菓子を持っている手の位置を見比べてください。53秒のあたりです。
黒い犬、数回、ハンドラーの手にしたお菓子に口を近づけて、食べようとした瞬間があります。お気づきでしょうか?
お菓子を持つ手の位置が低すぎると、黒い犬は歯を当てようと口を近づけるところがあります。探してみてください。
食べることを焦らされているあまり、ついつい口が出ちゃった箇所。
イキイキと競技に参加しているように見えて、イライラしているのはどちらでしょうか?フラストレーションが高いのはどちらですか?
「ドライブ」が高すぎる犬は扱いにくい?
先にも話しましたが、「ドライブ(欲求)」が高ければ高いほど、犬は興奮して「犬」になります。
多くの人たちが犬の問題行動で困っているのは、この犬のドライブのためなのです。
だって、ドライブ(欲求)=興奮=本能=リアクション…ですから。
リアクションというものは、人間だって自制できません。ついつい出ちゃう、これがリアクション。
梅干しを見ると、唾が出てきます。自分でコントロールできますか?
犬に困っている人は、「飼い犬」に困っているのではありません。「飼い犬」になっていない部分、「犬」がやっている本能的な行動に困っているんです。
つまり、この競技で私が説明したように、ドライブが高すぎる犬は扱いにくいということ。欲求に実直すぎるあまり、本能が出やすいと言えます。
もちろん、お菓子があれば、ハンドルすることは簡単です。ただし、お菓子以上に魅力的なもの、誘惑があればどうでしょうか?
この競技場を見てください。この状況は日常ではあり得ませんよね?
車も犬も猫も鳥もいない。通行人もいない。いるのは、審査を下す「ジャッジ」と撮影者、観客のみ。
まるで、アイススケートの競技のごとく、騒ぐ人はひとりもおりません。
動くもの、音がない状況だからこそ、ハンドラーが手にしているお菓子に夢中になれるのです。
犬が夢中、集中することでいい結果を出せるのが競技。でも、これほどの集中力が、日常生活で別のものに向いたとき、人の声が聞こえないという状況を作り出すのです。
ということは、人の声が届く状態の「飼い犬」が飼いやすいということになります。
お菓子をもらうために…これは「服従」ではない
ここでご説明したいのは「オビディエンス」という意味。日本語でいうところの「服従」です。
この競技の動画をみて、「服従」という定義を考えたとき、みなさんお気づきになりませんか?
「服従」とは、何も対価のない状態で従うこと。
この動画で説明すれば、「お菓子を求めている犬」の期待を「あきらめさせる」ことが服従なのです。
ハンドラーが手にしたお菓子を食べたくて集中して、いろんなコマンドに従っている様子は服従ではありません。
それは、「ほしいからやっている」だけです。
そして、それをやれば「貰える」という期待があるから、犬がハンドラーの言う通りに動いているんです。
これを人間にたとえると、札束をチラつかされて、それがほしいがために言うことを聞く。
言うことを聞けば、お金が貰える。これは「服従」ではありません。
「やってもらいたい側」と、「やらせられる側」の2つの欲求の折り合いが取れた状態。つまり、WinWinの状態ですよね?
仕事をやって貰いたい会社側と、仕事をすればお金が貰えるという社員側。一見、上下関係のようにみえて、双方が得を得ている状態です。
「諦める」そして、「従う」。これが服従です。
期待していたのに、期待通りに事が起きなかった…諦める…。
「諦める」ということは、自分の欲求を我慢するということ。つまり、自制するということです。
人も、犬も、行動を自制することはできます。ただし、人も、犬も、リアクションは自制できません。リアクションとは本能、生理的反応ですからね。