心の弱みと甘い誘惑
さらにAさんを奈落の底に突き落としたのは「請求書」。なんと写真と一緒に240万円の請求書が入っていたのです。確かにAさんは探偵に依頼するとき、「1週間につき60万円」と説明されたそうです。
しかし1週間が過ぎた時点で、探偵からAさんに対し、何の相談もなかった。今後も尾行を続けるのか、それとも、ここでいったん止めるのか。あろうことか、探偵は勝手に尾行を続け、どんどん料金が上乗せされていったわけです。
常識的に考えてどうなのでしょうか?だからAさんは探偵にこういってやったそうです。「高いお金払っているんだから、ちゃんとやってください。そんなんじゃ、詐欺ですよ!」と。
しかし探偵はAさんの「心の弱み」に付け込んできました。「あと1週間あれば、奥さんの望むような写真を撮れるかもしれない」と。その甘い誘いが助け船なのか、泥船なのか、Aさんが見分けることなど不可能でした。
待ち受けていた、悲惨な光景
不登校の娘を抱え、離婚調停のプレッシャーに苛まれながら、夫の浮気の真偽を確かめなければならない。もう、頭も心も一杯一杯だったのです。
だから240万円はもちろんのこと、さらに1週間の追加分60万円を上乗せし、即金で300万円を振り込んでしまった。そのお金は、娘さんの大学資金として貯めておいたお金なのに…。
結果は案の定でした。Aさんがもう1度探偵を信じたにも関わらず、果報は寝てもやってこなかったのです。さらにもう1週間が経過しても音沙汰がなかったので探偵の事務所に電話をかけたところ、電話は使われていませんでした。
探偵の事務所を訪ねるとすでに「もぬけの殻」。文句をいいたくてもいう相手さえ、存在しないという悲惨な光景でした。
Aさんはやることなすこと、すべて裏目裏目に出たのです。結局、「浮気の証拠」という強力な武器を得られないまま離婚調停の当日をむかえてしまいました。