お互いを尊重する「DESC法」
最後に、DESC法。DESCとは、「Describe・Express・Suggest・Consequence」の略です。「Describe・Explain・Specify・Choose」という考え方もありますが、どちらも要点はほぼ同じ。
自分の意見をただ押しつけるのではなく、相手の気持ちや立場を尊重しつつ、素直に率直に伝えることを目的とした話法です。自分優先の攻撃的な方法、相手優先の受動的な方法に対して、お互いを尊重するアサーティブな方法として知られています。
- Describe=事実を述べる
- Express=自分の考えを表現する
- Suggest=提案する
- Consequence=結果を示唆する
という流れで組み立てます。最初に客観的な事実を述べ、その上で自分の考えを伝えて提案し、結果のイメージを共有するという構成です。具体的な流れとしては、下記のようになります。
- Describe:伝えたい内容の事実を伝える(※キーワード例「いま、このようなことが起きています」「現状、このような状態となっています」)
- Express:自分の考えを表現する(※キーワード例「私はこのように考えています」「私にとってこれはこういうことです」)
- Suggest:提案する(※キーワード例「そこで、このようなご提案があります」「ここでご提案なのですが」)
- Consequence:結果を示唆する(※キーワード例「これにより、こういったことが可能になります」「そうしないと、こういったことになってしまうかもしれません」)
ポイントは3つあります。
- 事実と意見はわける
Dには「事実」のみ、Eには「意見」のみを入れることで、客観的な部分と主観的な部分がわかりやすくなります。 - 「自分の意見」をいう
Eでは一般的な意見や第3者の意見ではなく、「自分の意見」を伝えます。主語は「私は」として考えます。 - 結果はポジティブ・ネガティブ双方で考える
Cに入れる結果は、ポジティブなもの、ネガティブなもの、またはその両方というパターンが考えられます。1番伝えたいことは何なのか、そこに合わせて結果のイメージを考えます。
自分の意見となると、「いかに相手を納得させ、こちらのいうことに同意させるか」などで考えがち。でもどんな人でも、なにかを無理矢理やらされたり、考えさせられたりすることを好みません。そんなことになったら、大きな反発が生まれることもあります。
納得「させる」、同意「させる」という時点で、コミュニケーションは戦いの場と化してしまいます。コミュニケーションは「戦い」ではなく、「分かち合い」。お互いの意見を尊重しながら、ベストな道を模索することが目的です。その目的に沿ってDESC法で組み立てると、下記のようになります。
たとえば、「会議が始まって1時間」という状況だとしましょう。もうほとんど意見は出てしまって、煮詰まった雰囲気となっています。ここで手を挙げて、「あのー、すいません。これってこれ以上続けることに意味ありますか?」なんていったら誰1人いい思いはせず、「だったらお前がなんとかしろ」などと、ますます険悪な空気を生み出すかもしれません。そこで、下記のように組み立てます。
Describe
「すみません、ちょっといいですか。もう会議が始まって1時間が経ちました。ある程度意見も出尽くしているようです」
Express
「私は、これ以上このままで続けても新しいアイデアや意見は出にくいのではないかと思います」
Suggest
「そこでご提案なのですが、今日は一旦終了にしませんか。まだ結論は出てはいませんが、煮詰まった空気である以上、このまま続けるよりも少しでも時間をおいた方が、かえって新しい考えが見つかるのではないかと思います。手を止めて置いてきた仕事のことが気になって仕方ない人もいるかもしれませんし、一旦戻った方が、また落ち着いて考えられることあるかと思うのですが、いかがでしょうか」
Consequence
「そうすれば、無理矢理ではない結論を出して、みんなで納得して取り組めるという結果となり、効果が上がる可能性はより高くなるのではないでしょうか」