「損して得とれ」な離婚
たとえば、まずいまから3年後にIさんは亡くなり、Mさんが生きているパターン。Mさんが3年間で受け取る金額の合計は、生活費は252万円、年金の場合は144万円。
3年後の時点ではまだ「離婚しない場合の生活費<離婚する場合の年金」なので、Mさんは108万円を損しますが、これはMさんも3年後に亡くなった場合の話です。
もしも、Iさんが亡くなった後もMさんは生き続けたたら、どのような計算になるでしょうか?
Iさんがすでに亡くなっているので、生活費は0円です。一方、年金はMさんが亡くなるまで支給されるので、「月4万円×妻が生きている月数」になりますが、3年目以降の生活費と年金を比べた場合、どちらが多いのかは明らかです。
そして離婚から6年間(Iさんが生きている3年間+亡くなった後の3年間)の年金は合計で288万円に達するので、離婚から6年目で「離婚しない場合の生活費<離婚する場合の年金」に切り替わるのです。
Mさんは6年後には82歳をむかえますが、女性の平均余命は86.61歳なので(平成25年の厚生労働省の簡易生命表)まだまだ大丈夫でしょう。これは現実的な計算です。Mさんが長生きすればするほど、ますます「生活費<年金」の差は広がっていきます。
ところで当初、Mさんは「私の都合で離婚するのだから、お金を損しても仕方がない」と口にしていましたが、実際はどうでしょうか?
このように「夫の年金は無限、夫の生活費は有限」ということを踏まえたうえで具体的な数字を計算してみると、むしろ「離婚した方がお金を得する」ことがわかってきたのです。まさに「損して得とれ」です。
それに加えて、財産も受け取れます。婚姻期間中に築いた財産は夫2分の1、妻2分の1という按分割合で分け合うのが原則になっているのです。