父への告白

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さて、Kさんは父が入所している老人ホームへ出向き、話をつけに行きました。Kさんは父が「金に汚いタイプ」だと痛いほど知っているので、離婚の同意を取りつけるために、気持ちよりお金の面に重きを置いて、父の気を引こうとしました。
「前々から勘づいていたと思うけれど…母さんは父さんと別れたがっているよ。さすがに今回ばかりは決心が固いので、僕のほうで母さんを翻意させるのは難しそう。そういえばこの前、父さんが離婚してくれれば年金以外は何もいらないといっていたよ。ちょっと計算してみたんだけれど、父さんはいままで月に7万円渡していたよね。もちろん、離婚すれば渡さなくてもいいし、その代わりに年金を4万円、渡してくれればいいから、これからは3万円も浮くんだよ。結構、いい話なんじゃないかな?」
もちろん、Iさんもいきなりの「妻からの三下り半」に相当驚いた様子で、かなり動揺しており、2人の間には沈黙の時間が流れたようです。その日はとりあえず「まぁ、考えておく」といわれ、Kさんは施設を後にしたのですが、最終的にはIさんから離婚の同意を取りつけられました。
知っておきたい「離婚年金分割」
離婚年金分割という制度では、夫が妻へ分与すべき厚生年金(共済年金)は「2分の1」だと思われがちですが、そんなことはありません。
按分割合のルールは平成20年を基準に異なっており、具体的には「平成20年より後の年金は夫の同意がなくても2分の1まで分割できる」「平成20年より前の年金は夫の同意がなければ分割できない」というのが正しいです(※裁判離婚の場合を除く)。
極論をいえば、夫の同意を得られなければ、妻は夫の年金のうち、平成20年より前の年金をもらうことができないのです。
今回の場合、平成20年の時点でIさんは71歳、Mさんは69歳ですが、Iさんが71歳から78歳(平成20年から27年)までに納めた共済年金はゼロなので、万が一Iさんの機嫌を損ね、離婚の件がこじれた場合、MさんはIさんの年金をわけてもらうことはできません。