「言葉狩り」に拍車を掛ける日本
少し前の話で、「警察署長2人、処分」という報道を目にしました。「シバキ倒すぞ!」とか、「アホ!」とか「バカ!」とかの暴言を吐きパワーハラスメントを行った署長が処分され、精神的苦痛を受けた部下は休職中だったとか。このニュースをテレビで見たときに、私は何ともいいがたい気持ち悪さを感じたのです。
ニュースのアナウンサーが、真顔で「シバキ倒すぞ」「バカ」「アホ」という暴言を繰り返し…と冷静に原稿を読んでいる姿にまず違和感を覚えたし、大人が処分を受けるほどのことなのかと不思議に思ってしまいました(アメリカでは、警官の暴言は当たり前、横柄な態度は当たり前なので…)。
「バカ」とか「アホ」とか、これらの言葉なんて、小学生でも口にする言葉です。それなのに、立場という「位」のうえの者が、したに使った場合にはハラスメントになってしまう。
では学校で、もし生徒が、先生に対して「バカ」とか「あほ」と暴言を吐いた場合は、どうなるのでしょうか 。生徒は処分を受けますか?
言葉として口に出さないよう制御できたとしても、腹のなかでは幾らでも暴言を吐くことはできるし、またそういう腹のなかの暴言は、態度に表れてしまうもの。
そういう生徒の態度によって、先生という立場の人が「精神的苦痛」を訴えるとどうなるのだろう。「生徒の態度が悪い!」と、何ハラスメントになるんでしょうね。
こういった、さまざまな種類のハラスメントが乱用されるようになって、日本はますます言葉狩りに拍車を掛けていると思います。「立場がうえ」。
この「位」に対するリスペクトの文化は、「お殿さまがいた時代」から令和にも引き継がれている伝統的な儀式のようなものに見えて、私個人的には、不協和音を聞いたときのような気持ち悪さを感じてしまうのです。
日本の縦社会文化は、大昔から社会的地位に順列していて、したの者がうえを敬うことは当然とされています。それは座る場所にも決まりがあって、いまだに「上座」「下座」にわけられ、使われている。身分が高い人が座る場所が「上座」というマナーが、乗用車、船舶、列車、飛行機に至るまで存在しているのです。