アメリカの「敬語」と日本の「敬語」の違い
縦の文化だからこそ、「位」や「立場」を主張しようと競り合います。タクシー運転手に客が横柄だったり、逆も然り。医者が患者に横柄だったり、逆も然り。レストランでも客が店側に横柄だったり、逆も然り。つまり、日本のハラスメントとは、「立場」の主張、いわゆる「マウント」に過ぎない。
相手を敬う言葉として、日本には「敬語」が存在しますよね。それはとても美しい日本語で、アメリカに住んでから日本の書籍を読むと、言葉遣いや形容表現の美しさは芸術的で、いまだに感動します。ちなみに実はアメリカにも、「敬語」に近い話しかたというものはあるんですよ。
- 「窓を開けて」/Open the window.
- 「窓を開けてください」/Please open the window.
- 「窓を開けてくれる?」/Will you open the window?
- 「窓を開けてくれますか」/Can you open the window?
- 「窓を開けていただけますか」/Would you open the window?
- 「窓を開けていただけますでしょうか」/Could you open the window?
- 「できましたら、窓を開けていただけますでしょうか」/Could you possibly open the window?
- 「窓を開けていただけたらと思うのですが」/I wonder if you could open the window.
- 「窓を開けていただけたらありがたく存じますが」/I was wondering if you could open the window.
- 「窓を開けてくださいとお願いしてもお気を悪くされないでしょうか」/Would you mind if I asked you to open the window?
こんな感じ。日本とアメリカでの大きな違いは「縦」か「横」かにあります。日本の敬語は、うえの立場にいる者(人)への丁寧な言葉使いとして使われますが、アメリカは「横」の繋がり重視。
1~4は、いわゆる親密な関係、友人とかに使う英語で、5以降になるほど、相手との距離が遠ざかる。上下の距離ではなく、横の距離感「親密度」なのです。
だからなのでしょう。上下関係に重きを置かない、殿さまのいなかったアメリカでは「立場」を主張するハラスメントというものが、日本ほど存在しません。単なる両者の「いいぶん」があるだけで、そこに「ハラスメント」は存在しないのです。
レストランで横柄な態度をとったウエイトレスがいたとしても、チップの金額が少なくなるくらいで、それは自業自得だし、逆に客のほうがレストランで横柄な態度をとれば、警察に通報される。ただ、それだけ。
アメリカ国内の機内で、オーバーブッキングをしてしまった航空会社のキャビンアテンダントが、乗客を強制的に飛行機から降ろそうとしたとき、その乗客の扱いかたが暴力的であったとして、SNSにその様子の動画が挙がりニュースになったこともありますが、「ハラスメント」という言葉は1度も聞きませんでした。
ただ、「暴力的」で「人道的ではない」という批判が航空会社に多く寄せられ、後日、航空会社が謝罪をする羽目になったというだけで終わったのです。
もともと、英語のハラスメントという言葉とアメリカのハラスメントの定義が日本に上陸したわけですが、これほどまでに種類を増やし、ハラスメントブームを巻き起こしているとは、多くのアメリカ人は知らないでしょう。
最後に疑問に疑問に思っていること。日本では、男性トイレに女性の清掃員が入ることは当たり前なようですが、男性にとってそれは「セクハラ」にはならないのでしょうか。
アメリカでは、絶対ありえません。さまざまな「ハラスメント」が認められているのに、これだけは声が挙がらないことが不思議だなと思ってしまいます。
- image by:Shuttersrtock
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