シングルマザーに優しい国、韓国
ついでにもうひとつ、韓国の苗字にまつわる話をご紹介しましょう。実は、苗字と結婚に関する法律が韓国には存在しました。「同姓同本不婚制度」というものです(参考:崔達坤「韓国法の特色 ―家族法を中心として」)。
この法律は、「同じ本籍地の同じ苗字同士の男女は結婚できない」というもので、韓国ドラマ『応答せよ1988』のエピソードとしても登場しています。もとは朝鮮王朝が作った法律で、親族争いが激しかった当時、親近婚を防ぐために作られた法律だといわれています。
しかし、だんだんこの法律も時代に合わなくなり、1980年代には8等身以内の親族との婚姻を禁ずるまで緩くなっています。最終的に、1997年に憲法裁判所がこの制度の憲法不合致の決定をし、1999年よりこの制度はなくなりました。逆にいうと、ほんの20数年前まではこのような法律が存在したということです。このような法律のせいで愛し合っていても結婚できないカップルも多かったようですが、まるでロミオとジュリエットのようですよね。
話を戻すと、韓国でも離婚後に子どもの親権を母親が持つことが多いようです。
日本ではシングルマザーの貧困が問題になっていますが、韓国はいま、シングルマザーのためのサポート制度が整っています。実際、国の行政機関の中には「女性家族部」という、日本でいう省に該当する機関もあるほどです。
しかしながらこの女性家族部、以前は女性の権利を向上するための機関でしたが、最近は男性に対する逆差別なども問題になり、国民からの印象が少し悪くなっています。
「日本と韓国のひとり親家族支援策の違い」について書かれた神戸学院大学の神原文子教授の報告でも、「日本の経済的支援策は、死別、離婚、未婚親の間の差別を前提とした支援策であるが、韓国の経済的支援策は、ひとり親家族の生活困窮度を基準とした支援策である」、また「日本の支援 策にはないが、韓国においては、近年、ひとり親家族のエンパワメントとひとり親家族に対する差別や偏見をなくす教育・啓発に力を入れている」とされており、女性サポートの機関が多くある韓国は、日本に比べてシングルマザーが困窮するケースは少ないといえます。
今回は韓国人の結婚や離婚についてご紹介しました。このような背景を知っておくと、韓国ドラマをより楽しんで観られるようになるかもしれません。
- 参考:マイナビウエディング、韓国統計庁、東京外国語大学、崔達坤「韓国法の特色 ―家族法を中心として」、神原文子「日本と韓国のひとり親家族支援策の違い」
- image by:Unsplash
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。