配偶者との離婚には、ふたりの話し合いで決める「協議離婚」のほかに裁判所での「調停」、または「裁判」があります。
配偶者との話がまとまらないときは、どちらかが調停を申し立てて財産分与や親権などについて話し合う機会が設けられますが、裁判と違い「こうすべき」の判決が出ない調停では、双方のいろいろな思惑が飛び交うものです。
離婚調停ではどんなことが起こり、どんな人間が登場するのか、数々の離婚裁判を傍聴し、調停についても数多のヒアリングを行なってきた筆者が筆者が見たリアルについてご紹介します。
- ※本記事は実際の調停内容をもとに、本人特定に繋がらないよう一部フィクションが含まれます。
話し合いがまとまらないときに使えるのが「離婚調停」
離婚調停は、正確には「夫婦関係調整調停」といい、夫と妻のどちらでも裁判所に申し立てることができます。
離婚そのものを争うときや、離婚には同意するけれど条件で折り合いがつかないときなど、話し合いがまとまらない場合に利用できる制度です。
離婚調停では「調停委員」と呼ばれる法律などの専門的な知識を持つ人がふたりの間に入り、双方の主張を聞いて歩み寄る点を提案し、離婚もしくは円満(離婚せず婚姻関係を続ける)の結末に向けて調整していきます。
話し合いは裁判所で行われるのですが、裁判と違うのは裁判官が離婚を認める(もしくは却下する)のではなく、「あくまでふたりの話し合いによって決める」ことです。
調停委員はそれぞれの話を聞いて争点を整理し、妥協できる点を探して提案してくれますが、双方が納得しない限り離婚は成立せず、「不成立」で終わることもあります。
調停に参加できるのは、当事者である夫と妻、また代理人として依頼された弁護士のみ。親族や友人などは調停室には入れない決まりですが、裁判所の控室までは来ることが可能なので、親やきょうだいについてきてもらう人もいます。
慣れない場で身内が側にいてくれるのは当人にとっては心強いですが、一方で望む結末にしようと強引な論を押し付けたり間違った法律の知識を吹き込んだり、調停を混乱させる場合も少なくありません。
今回は、この「調停に口を挟んでくる人間」についてどんな状況になるのかをご紹介します。
浮気の謝罪より財産の詳細を知りたがる夫の親族
ある妻は、夫が浮気している証拠をつかんだことから離婚を決めました。
夫は会社の部下の女性を熱心に口説いており、肉体関係を持ったと確信できる証拠はないものの「ふたりが寝るのも時間の問題だ」と思った妻はそうなる前に別れてしまおうと思ったそうです。
浮気が発覚したのはLINEでのやり取りを目にしたからですが、それを突きつけたうえで離婚を求めると夫は「ただの遊び。そんなものは証拠にならない」と承諾せず、その日は口論で終わりました。
次の日、仕事から帰った妻に夫が渡したのは、夫の兄が「財産について明細を見せるように」と一方的な口調で書いたメモ。
自身の浮気については一言もふれず、いきなりお金の話を持ち出すことに妻は強い不快感を覚え、数日のうちに子どもを連れて自分の実家へと戻りました。
協議離婚は無理だろうと思った妻はすぐ裁判所に夫婦関係調整調停を申し立て、別居がはじまった2カ月後に最初の話し合いが決まりました。