「自分の意思が見えない夫」に裁判官がかけた言葉
調停では、これ以上話し合っても解決は難しいと裁判所が判断した場合は「不成立」となり、終了します(ほかにも裁判官が下す「審判」もありますが、ここでは触れません)。
不成立になるときは、裁判官から双方にその旨が伝えられます。
夫は、調停委員より「争いのない離婚を先に成立させて、財産分与については改めて話し合ってはどうか」という提案を「借金について話がまとまらないなら離婚はしません」と蹴りました。
これこそ夫(とその兄)の狙いだと妻は確信し、「本調停で離婚しないのであれば、裁判を起こす」と伝えますが、夫の答えは変わりませんでした。
このときも、夫は離婚の成立について調停委員の前では合意しており、裁判官が登場する段になって「やはりやめる」とひるがえしています。
このときのことを、妻は「そうだろうなと思ったからショックではなかったけど、これまで力を尽くしてくれた調停委員や裁判官の気持ちを考えたら、本当に非常識だと腹が立った」と振り返ります。
土壇場になってもお金に執着する夫の、親族の目論見にのまれみずからの気持ちが見えない姿に、裁判官はこう告げます。
「あなたの意思はどこにあるのですか」
夫は「黙って下を向いたまま」だったそうで、これを調停委員から聞いた妻は「本当に情けない」とため息をついたそうです。
裁判官とその両脇に座る調停委員、三人を前にうなだれる夫の姿を想像すると、「離婚を決めたのは間違いではなかったと改めて思った」のが妻の本音。
半年以上かかった離婚調停でしたが、終わってみれば夫側の悪意に翻弄されただけの時間であり、疲労困憊したけれど妻はこれから離婚訴訟を起こさなければいけません。
調停ならではの“弱み”
裁判になると、調停とまったく様相は変わり、すべてが法律によって決められます。
「お金もかかるし大変だけど、救いはね、夫と兄はもうゴリ押しができなくなるのよ。借金について正確に証明することを求められるし、私の隠し財産だの主張しても、すべて証拠が必要になるの。調停で手を打っておけばよかったって思うでしょうね」
妻は調停のときから相談していた弁護士に正式に代理人を依頼し、いまは準備を進めています。
話し合いが基本となる調停は、法律にとらわれない柔軟な考え方で物事を決めていけるのがメリットですが、その反面、不誠実な対応をされてもそれに法律で対抗することができず、話が一向に進まないことも少なくありません。
このケースのように、離婚を盾に“ゴリ押し”で自分の得だけを要求する相手だと、離婚の成立はどんどん遠ざかります。
調停が不成立に終わる気配を感じたときは、次の段階、訴訟を見据えた判断が必要です。
このケースでは、妻は調停を申し立てたときから弁護士に相談しており、「裁判になればこの主張はどうなるか」などの話を聞けたことが大きな助けになったといいます。
ひとりで臨むのが不安なときは、弁護士に依頼するなど早めの対策が必須。「何が起こるかわからない」と思い、自分の身を守る方法を考えましょう。
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