こんにちは、椎名です。僕は身体の性が女性で心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと生活をともにしています。
2022年4月から新たに15の自治体でのパートナーシップ制度がスタートします。全国のパートナーシップ制度を実施している自治体はこれで171となりました。
今年度の秋からは東京都でも「東京都パートナーシップ宣誓制度」の実施が予定されており、実現すると実施している自治体に住む人口は日本の総人口の半数以上になるそうです(参考:みんなのパートナーシップ制度)。
住まいや勤め先のある自治体がパートナーシップ制度を導入しているというかたも、以前より増えたのではないでしょうか。
導入した自治体の増加に伴い、企業でパートナーシップ制度を利用できるサービスが増えたり、在籍する当事者の社員への対応がいままで以上に必要になってくるかと思います。
そこで今回は、企業におけるLGBTQ+の取り組みについてお話します。
LGBTQ+研修と社内規定
2015年に渋谷区でパートナーシップ制度が導入されて以降、勤め先でLGBTQ+の研修を受けたかたもいらっしゃるかと思います。
ダイバーシティやSDGsの取り組みの一環として、社員向けにLGBTQ+に関する研修を行う企業は年々増えているでしょう。
しかし研修は行っているものの、実際は当事者の社員が社内にいない・把握できておらず、研修以外の取り組みが進められていない企業も少なくありません。
定期的な研修の次の取り組みとしておすすめしたいのは、社内規約や制度の見直しの検討です。
当事者の目線で見ると、研修を行っていても社内の制度が伴わなければ、当事者に対して理解のある企業としては十分ではありません。
「社内に当事者がいない」のは、当事者が利用できる制度がないため、「社内でカムアウトをする必要がない」「形だけで企業としては当事者に対する理解度が低い」と思われているのかもしれません。
ちなみに筆者の勤め先も研修のみで受けることができる制度は特にないため、社内では公にカムアウトをしていません。カムアウトをしていない、企業にとって見えない当事者社員はすでに社内にいると考えていただきたいです。
社内規定や制度が改定になることがきっかけで、当事者以外の社員も「ただ研修を受けるだけ」よりも、「自分の身近にある現実のもの」として捉えやすくなります。こうしたことが、社員ひとりひとりに理解を深めてもらうことにも繋がると思うのです。
対象となる社内規定・制度
では具体的に、LGBTQ+当事者にとって必要な社内の制度とはどんなものでしょうか。
まずはいまある規定や制度のなかで、配偶者がいる社員が対象となっている制度を見直しましょう。
社員が結婚をした場合や入社時既婚であった場合に受けることができる制度を、パートナーシップ制度を利用しているLGBTQ+当事者のカップルも同様に利用できるよう範囲を変更してみてはいかがでしょうか。
現状、日本では同性同士で婚姻を結ぶことができず、パートナーシップ制度を利用することになります。パートナーシップ制度は法的拘束力はありませんが、申請した自治体においてLGBTQ+カップルも婚姻を結んだ家族と同様であると認めるというものです。
たとえば社員が結婚する際に受けることができる制度として、社員に対しての祝い金、結婚式や新婚旅行のための結婚休暇、配偶者手当を導入している企業は珍しくありません。
そのほかにも休暇に関するものであれば、家族の看護・介護のための休暇や忌引きなど。カップルによっては産前産後休暇、育児休暇、配偶者の出産、育児による時短勤務なども、異性カップル・夫婦と同様受けることができるようになるといいなと思います。
身体の性を心の性に合わせる手術や治療を病気休暇などのひとつとして許可する、というのもいいかもしれません。
さいごに、見落としがちですが“緊急連絡先”にパートナーの連絡先を登録することができるととても親切だと思います。
実は僕も総務部にお願いをし、誰にも知られない形でパートナーを緊急連絡先として登録してもらっています。
緊急連絡先は本来社員の身に何かがあった際に使用する連絡先なので、一番にパートナーに伝えてもらいたい。社員本人が地元から離れている場合は、地元の家族よりもパートナーに連絡をしてもらったほうが、いま現在の身の回りのことを把握しているので入院の準備などが必要になってもスムーズだと考えます。
当事者ではなくても、緊急の連絡先が変更になる場合は往々にしてあると思うので、定期的な見直しが必要です。その見直しの際に連絡先の人との関係性・属側に「パートナー」と加えると当事者にも当事者以外にとってもよいことだと思います。