こんにちは、椎名です。僕は身体の性が女性で心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと生活をともにしています。
新型コロナウイルスの流行に伴い、一気にテレワークが進んだ2020年。
そして、流行語大賞に“誰ひとり取り残さない社会”を目指す取り組み「SDGs」がノミネート、「ジェンダー平等」がトップテン入りするほど話題になった2021年(参考:ユーキャン新語・流行語大賞)。
このおおよそ2年ほどの間で企業の規模を問わず、「働き方」や「多様性」について議論されるようになりました。この数年をきっかけに、取り組みをはじめた企業も多いのではないでしょうか。
今回は働き方や多様性に対する企業の取り組みについて、普段従業員サイドである僕が、企業サイドに立って考えました。みなさんの考えるきっかけになれば幸いです。
従業員満足度
企業で働き方について取り組む際にキーワードになっているのが、「ダイバーシティ&インクルージョン」。直訳するとダイバーシティは多様性、インクルージョンは包括・包含という意味です。
年齢や性別、国籍、障害やライフスタイル、価値観といった内外にもつ属性問わず、それぞれを尊重することを指しています。
これらの取り組みで代表的なものは、障がい者雇用やLGBT研修、産育休や介護休暇の充実のほか、女性管理職者の割合など。それに加え、ライフスタイルや価値観の部分としてテレワークや副業可能、服装自由、フレックス制度や時短勤務などが挙げられます。
企業側は単純に「時流に乗らなければ」という考えももちろんあると思いますが、下記の3点に繋がることを目的として取り組みたいという側面があります。
- 生産性の向上
- 人材の流出防止と優秀な人材の確保
- 顧客満足度の向上
そしてこれら3点は、「従業員満足度」の向上によって向上すると考えられます。
生産性はアウトプット÷インプット(コスト)という式で測ることができ、向上させるにはインプットであるコストの削減で図ることが可能です。
しかしそれ以外でも、従業員それぞれが持つ能力を発揮させ、アウトプット自体を増やすことで向上させることができるとも考えられています。
従業員が満足できる働きやすい職場は離職率を下げ、さらには採用時に優秀な人材からの応募も望めます。
それがゆくゆくは顧客満足度にも繋がるのであれば、利益を得るという企業の根本的なミッションに直結するため、取り組まないよりは取り組んだほうがいいでしょう。
もちろん従業員満足度を向上させるには十分な給与や職場での良好な人間関係なども必要ですが、これらの取り組みが関わる福利厚生や“働きがい”の部分も大切な要素のひとつです。
そしていまこの従業員満足度向上に、「ダイバーシティ&インクルージョン」が求められているのです。
従業員との間に生まれるギャップ
従業員のために制度を設けても利用率が上がらない、社内に浸透していかないという場合もあるでしょう。その原因のひとつは、「ニーズを正しく拾い上げられていない」ことではないかと考えます。
たとえば、男性社員が長期で育児休暇を取得できる制度を新たに設けたとします。制度を利用してくれそうな社員もいたので利用してもらおうと考えましたが、思うようには取得してもらえませんでした。では、なぜ取得してもらえなかったのでしょうか?
男性の所属する部門やチームは、まだできたばかりの制度を取得し難い空気感があったり、彼の上司が制度に対する理解が不足していたとします。そうなのであれば、制度に対する理解を深めるために育児休暇制度についての説明会が必要かもしれません。
もしくは男性が業務過多で、月の残業時間をみても育児休暇を取得したくても取得が難しい状況だったのならば、制度の取得以前に人員不足が課題になります。
とはいえ、すぐに人員を投入することは採用や人事の面で難しいのが現実。その場合はワークシェアリングや業務の整理の推進、内容によっては外部への業務委託で緩和できるかもしれません。
どの理由が原因であっても利用しにくい、できない制度は従業員満足度の向上には繋がりにくいでしょう。制度を設けるだけでなく、使いやすい環境づくりまでがセットだと従業員側である僕は思います。