離婚したいけれど、配偶者と話し合いがまとまらなかったり条件で折り合いがつかなかったりするとき、利用できるのが家庭裁判所で開かれる離婚調停です。
双方の承諾で叶う協議離婚と違い、家庭裁判所で委員を交えながら離婚の成立を目指す調停は、思い通りに進まない状況にストレスを感じることもあります。
その結果、離婚した後でも元配偶者へのわだかまりが消えず、どこかで溜飲を下げようと嫌な関わり方をする人もいます。
前回は、離婚成立後に嫌がらせとして、元妻と娘が暮らすアパートから徒歩10分のところに引っ越してきた元夫のケースをご紹介しました。
今回も、離婚調停後で元配偶者に起こされた実際のトラブルをご紹介します。
「共通の友人」を奪われて…(女性/36歳/看護師)

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「元夫とは、いわゆる『性格の不一致』で離婚しました。
仕事のせいで生活のリズムが違い、新婚からレスだったし休日に別々の予定を入れることも普通で、夫婦というか同居人のような感覚だったのかもしれません。
離婚を決めたのは、義両親から子どもについて急かされたのがきっかけです。
これを機会に『ちゃんと愛情を確認できる夫婦になりたい』と必死に考えて夫をベッドに誘ったのですが、『いまさらそんな気になれないし、お互い外で済ませるほうがよくない?』と真顔で返されて、夫はいままでもそうしていたのだと気がつきました。
でも、浮気や不倫の証拠はないから問い詰めたところで逃げるのはわかりきっているし、どっと疲れてしまい『夫婦でいる意味がないから離婚しよう』と言いました。
夫はその場で『わかった』と答えたのですが問題は義実家で、『孫を楽しみにしていたのに』と電話で義母から言われ、ショックでしたね…。
離婚話がこじれたのも義母が『子どもも作らず離婚するのなら、財産分与は諦めて』とごねたのが原因で、そのとき夫が『レスは妻に責任がある』と義両親の前で口にするのを見て、何が何でも平等な財産分与で離婚してやると決めました。
幸い会社に社員寮があり、事情を話したら一部屋貸してもらえることになり、すぐに引っ越して家庭裁判所に離婚調停を申し立てました。
調停のことは夫にも話しており、冷たい声で『金目当てか』と言われたことも忘れられません。
調停では義母も家庭裁判所に来ていると調停委員のおふたりに言われ、『どっちが金目当てなのだろう』と心底腹が立ちましたね。
夫は早々に離婚について承諾し後は財産分与の話のみ、『両親の期待を裏切ったのだから妻は分与を諦めるべき』ととんでもない主張を口にする夫に本当にめまいがするかと思いました。
調停委員のおふたりは『レスはふたりに責任がある』『奥さんが誘ったのをあなたは断っていますよね』と冷静に夫に話してくださったようで、私たちだけでは絶対に進まなかったであろう『レスの原因はどちらにあるのか』について、それを理由に財産分与の放棄を求めることはできないと私にも話してくださり、ほっとしました。
それでも夫は財産分与はしないと譲らなかったのですが、最終的に担当の裁判官から『法律で二分すると決まっています』と言われ、渋々と受け入れたそうです。
調停を起こして本当によかったなと思ったのは調書の強制力で、払わないのなら差し押さえもあると知った夫は調停で決まった通りの処理を進め、私が求める通りの離婚が叶いました。
まさに胸がすく思いで晴れて独身になったのですが、元夫の嫌がらせは離婚後に始まりました。
私たちには共通の友人がいて男女の隔てなく仲良くしていたのですが、私が一番親しくしている女性から、元夫が離婚について『財産分与目当てで離婚を計画し、レスを俺のせいにした』『実は男がいてそいつと付き合うために離婚した』とまたとんでもないことを吹聴していると聞きました。
友人はそれを疑って私に連絡をくれたわけで、本当のことを話しほかの人にも伝えてもらうようお願いしたのですが、なかには夫の言い分を丸ごと信じて『だから女は』みたいに私を下げて言う男性もいたそうです。
同性でも『調停まで起こすのはやりすぎでは』と言う友人もいて、悲しかったですね…。
元夫は私の連絡をすべてブロックしており、考えた末に一番仲のいい友人に調停で提出した書類を渡しました。
そこには時系列で元夫が私の誘いを断ったことや休日に黙って家を空けてばかりいたことが書かれていて、内容について元夫が『間違いない』と言っていることも記入しており、真実の動かぬ証拠です。
それを目にした友人は息をのんでいましたが、元夫に『調停の文書を読んだよ』と伝えたら私と同じく連絡先をブロックされたようで、これがきっかけで元夫の嘘は共通の友人たちの知るところになりました。
それでも一度できた溝はなかなか消えず、いまも信頼の回復しないままの人もいます。
元夫は孤立しているようですが、離婚後までこんなトラブルを起こす人に過去は愛情を向けていたなんて、悲しくなりますね……」(女性/36歳/看護師)
自分の離婚について、都合よく真実を捻じ曲げて話す人は驚くほど大勢います。
共通の知り合いにわざわざそれを伝えるのは元配偶者を孤立させたいからで、真実がどうあれ「調停を経ての離婚」に疑問を抱く人もいればこちらが遠ざけられるのは避けられません。
ですが、調停があったからこそ手元には真実を示す証拠が残っていることもあり、こちらのケースのようにそれが我が身を救います。
調停では互いの認識の差が問題点になりますが、それを文書でまとめておくと離婚後のこんなトラブルで役に立ちます。
心ない元配偶者のいいようにされないためにも、離婚の証拠は後々まで残しておくのが吉といえます。
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