カムアウトを受けることへの不安
カムアウトをすることはとても勇気が要ることですが、カムアウトを受ける側も当事者を不用意に傷付けてしまうかもしれないと思うと不安だと思います。
なかには、「そんなに大変なことなら、カムアウトをしないでほしい」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。
万が一自分が誤ってアウティングをしてしまうことを想像し、最悪の場合を考えて「対応の過ちで人を死なせたくない」とカムアウトされることに重圧を感じるのならば。
きっとそんな責任感が強く真剣に考えてくれる人だからこそ、カムアウトをする人はカムアウトするに足る信頼をしてくれているのでしょう。
大事なことだからこそ、最低限当事者本人が設ける一定以上に信頼することが出来る人に話したいというのはごく自然な流れのように感じます。
筆者も職場などでカムアウトをする際は、普段接している中で「この人になら話しても大丈夫」と思えた人にだけカムアウトをしています。
結果アウティングされてしまいましたが、アルバイト先の同僚に対しても、筆者なりに信頼をしていたからカムアウトしました。
負担に思うのではなく、「信頼してくれているのだな」ということに重きをおいて考えていただけるとよいかと思います。
カムアウトされたらどうしたらいいの?
カムアウトされることを負担に思ったり、不安に思う場合、その原因のひとつに「どう対応したらいいかわからない」ということがあるかと思います。
まず、前述の通りカムアウトをした人はあなたのことを、自分にとって大事なことを話せる程度に信頼して話しているはずです。
そのうえで、カムアウトを受けて感じたことを、真剣に話すことが基本の姿勢でよいと筆者は考えます。
「話してくれてありがとう」でもいいし、セクシュアルマイノリティであるとカムアウトを受けたのが初めてで不安がある場合は、「周りにセクシュアルマイノリティだと話している人がいないから、傷付けることを言ってしまわないか心配」と正直に言ってもいいです。
きっと言葉は選ぶことにはなると思いますが、これから当事者との人間関係をよりよく続けていくための対話の範疇だと思います。
パートナーの有無やカムアウトをした当事者の置かれている実情など、気になる部分もあるとは思いますが相手のプライバシーに踏み込み過ぎるのもよいことではありません。
どの程度プライバシーに踏み込むかは当事者とあなたの関係性にもよる部分がありますが、異性愛者に聞いて失礼なことは当事者にとっても失礼だと考えていいでしょう。
カムアウトが会社の部下からのもので、勤め先にパートナーシップ制度を申請する際に祝い金があるとか、緊急連絡先にパートナーを加えることができるなど当事者に関わる制度がある場合は、そのためのものと説明したうえで質問をする分には問題ないかと思います。
自分が誤ってアウティングをしてしまわないか不安なかたは、カムアウトを受けた際は「同じコミュニティ(社内など)のなかで、自分以外にこのことを知っている人はいる?」と確認しておくとよいかもしれません。
もちろんすでにカムアウトをした相手になら話していいかは当事者次第ですし、オープンにしたいとは限りません。同意なく口外してはいけないことは変わりませんが、心的負担は少しやわらぐのではないでしょうか。
また、これは考え方のひとつですが、人付き合いのなかで、第三者に極力口外しない方がよい個人個人の事情というものは性的指向や性自認以外にも往々にしてあるもので、第三者からそのことについて知っているかと聞かれ知らないふりをした経験があるかたは少なくないのでは。
「他人の秘密を知ったから誰かに言いたい!」というのは、セクシュアルマイノリティへのアウティングではなくても問題行動です。
そんな「口外してはいけない他人の事情」のひとつと考える考え方もあります。