誰のための離婚?(36歳/セールス)
「うちは典型的なサラリーマン一家というか、両親は正社員の共働きで私と姉も会社員、結婚して家を出てからも仕事を続けるのが当たり前でした。
離婚したのは元夫の浮気が原因で、不倫の証拠までは掴めなかったのですが当の元夫が『お前には女としての魅力を感じない』と自分の浮気を正当化していたので、それが許せずに別れることを決めました。
実家に行ったときにそれを両親に話したら、『夫に浮気されて離婚なんて、世間体が悪いだろう』とふたりはまず離婚に反対しました。
世間体だの子どもがかわいそうだの、そんなことはとっくに私も考えていて、『家庭をないがしろにしてよその女にうつつを抜かす男が父親であるほうが恥ずかしい』とはっきり言うと、黙りましたね…。
成人した娘が離婚したっていまさら両親の影響なんて薄いのに、どこかで『結婚に失敗した娘がいる』現実を嫌がっているのがわかりました。
姉に打ち明けたら『信じられない』『反省も謝罪もしないなんて、先はないね』と真っ先に言ってくれて救われましたが、親の価値観がおかしいことは、『自分たちもいろいろあって、我慢して夫婦を続けてきたのだろうね』と、また違う意見でした。
親の事情がどうであれ私には私の人生があるわけで、『たかが浮気』と言われようとも、惨めな結婚生活を続ける気はいっさいありませんでした。
両親は離婚に反対し続け、姉だけが応援してくれる状態でしたが、それでも別居に踏み切ったことは後悔していません。
自分の収入があるのですぐに一人娘を連れて家を出て、離婚の話し合いに応じない元夫に耐えかねて調停を申し立てました。
別居も離婚も反対していた元夫は、別々になってからは『早く戻ってこい』と自分の浮気にはまったく触れず、そんな態度にも腹が立つ一方でしたね。
調停の通知が届いたのか元夫からの連絡はやみ、出席するのかどうか不安だった一回目の期日、元夫は裁判所に現れました。
離婚したい理由が自分の浮気だとわかっていた元夫は、今度は『悪かったと思っている』と言い出したものの『奥さんへの謝罪は』と調停委員のかたから言われたときは、『妻にも問題があるのでは』と拒否したそうです。
その元夫の態度を聞いて『二度と同居には戻らない』と改めて決意した私は、離婚一択のまま、最後まで元夫の『浮気の原因は妻にある』という主張を聞き入れませんでした。
私の意思が固く結婚生活を続けるのは無理であることを悟った元夫は、今度は財産分与で自分に都合のいい配分を求めてきましたが、それもきっぱりと拒否しました。
調停委員のおふたりは、私たちが同居に戻るのは無理と判断してからは淡々と財産分与について夫の説得を進めてくれて、最終的に半分で分けられてよかったです。
離婚が成立したことを両親には一応伝えましたが、『わかった』とだけで反応は薄かったですね。
仕事をしていて本当によかったとつくづく思いますが、いまは娘と落ち着いて暮らしています。
誰のための離婚なのか、世間体や当人以外のことを前に出して避けるのって、正しいのでしょうか?
両親とは疎遠になりましたが、姉とはいまも変わらず仲良くしており、これも仕方ないのかなと思っています。自分の人生の方向は自分で決めたいですよね」(36歳/セールス)
我が子が離婚することを反対する理由に、夫婦仲ではなく世間体や子どもの存在を持ってくる親はたしかにいます。
客観的に見ればそんなマイナスの部分は避けられないのが離婚ですが、かといってそれらの価値を守るために自尊心まで捨ててしまうのが、結婚生活の正解とは思えません。
「誰のための離婚なのでしょうか」というこちらの女性のつぶやきは、自分の人生の責任をしっかり引き受ける覚悟があるからこその疑問です。
両親との価値観が合わないとしても、それに従うより自分の幸せを正しく求める姿勢が、今後の人生を前向きなものにすると感じます。
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