ママ友ボスが「知らなかったこと」とは
美沙さんは「卒園までこんな状況なのか」と苦しんでいましたが、どんでん返しは意外な方向からやってきます。
「美沙さんの友人の旦那さんが、ママ友ボスの夫の先輩でした。高校時代に陸上部でずっと仲がよく、旦那さん同士でいまもお付き合いがあるらしく…色々話を聞いた美沙さんの友人が旦那さんに相談したら、ママ友ボスの夫まで話が進んだようです」
あるときから急にママ友ボスの様子が変わったのはこれが原因だったと思う、と正美さんは振り返ります。
それまでわざとらしく美沙さんの存在を無視してきたママ友ボスは、美沙さんを見かけると明らかに避けるようになったそうです。
美沙さんが心配で園の送迎なども一緒に行っていた正美さんは、「取り巻き連中も友人の悪口を吹聴するのをやめたのか、周りからあれこれ詮索されることがなくなったと美沙さんは言っていました」と、事態が収まってきたことを感じます。
美沙さんはママ友から、旦那さんに相談したこと、旦那さんがママ友ボスの夫に話したことを教えてもらい、「余計なことをしてごめん」と謝られたそう。
それに対して、「こちらこそ本当にありがとう」と何度もお礼を言ったそうで、ママ友の存在に心から感謝していたそうです。
ママ友ボスが知らなかったのは、同じ園内に自分の夫とつながりのある保護者がいたことで、「世間の狭さを実感しました」と正美さんは話しますが、地元が同じならこんな可能性は当然にあります。
自分の妻が子の通う幼稚園で何をしているか、他人から聞かされて知った夫はどんな対応をしたのでしょうか?
「本当に弁護士なら、やめさせる一択ですよね」と、正美さんはため息をつきました。
人が離れていく現実
その後、このママ友ボスがいるグループは「弱体化」していったと言います。
それまでいつも夫の職業を鼻にかけてカースト上位に君臨していたママ友ボスは、「グループ内でいじめをしていた挙げ句にそれを夫に知られて怒られた」という話が園に出回り、美沙さんと同じくグループ内で下位だったママ友たちは次々とグループLINEを脱退していったそうです。
美沙さんのように窮屈な関係に疲れていた人は多く、園のなかで幅をきかせていたグループは、ママ友ボスの沈黙によって存在感を失っていきます。
「さすがに、自分の夫の先輩と結婚している保護者を攻撃するなんて、ママ友ボスにはできなかったようです。結局、何をしてもその人から報告があれば自分が夫に責められますよね。いい気味だとは思いましたが、美沙さんに謝罪がなかったことは、いまも悔しいです」
美沙さんは、それに対して「そんなこと絶対にできないでしょ、プライドだけは高いから」と笑っていたそうですが、ママ友ボスのこんな姿もほかの保護者から白い目を向けられる理由だったことは想像できます。
一方的に関係に上下をつけ、他人を駒のように扱う人間は、いずれ別の方向から攻撃を受けて失脚します。
人としてまともな情愛でもって関係を大切にするのではなく、自分の満足だけをメインに据えた人間関係など、健全ではないからです。
グループを抜けようと決心した友人の振る舞いが正解だったことは、この一件の後ほかの保護者の人たちと楽しく過ごせている現実を見ればわかります。
ママ友に限らず、人とのつながりはあたたかい気持ちで続けていく姿勢が自分を救うのですね。
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