こんにちは、椎名トキです。僕は、セクシャルマイノリティの当事者。「体の性」は女性ですが、「心の性」は定めていません。今回は体の性が「同性」である、一緒に暮らしているパートナーとの出会いから、最近までの話をしたいと思います。
始まりは「恋人ごっこ」
彼女との出会いは中学校。同じクラスで、好きなアーティストやマンガが同じだった彼女とはすぐに気が合い、なかよくなりました。CDやマンガをこっそり学校に持ってきては、交換をしていた記憶があります。交換するときには、一緒に手紙やかわいく折られたメモを添えたりして。気がつけば、特別に仲がいい友人同士になっていました。
彼女を恋愛対象として意識したきっかけは、「恋人ごっこ」。僕たちの共通の仲のいい先輩ふたりが、女の子同士で恋人同士のように振舞っていて(実際先輩たちが付き合ってたかどうかはわかりませんが)、その先輩たちに彼女が影響されたのか、「恋人ごっこ」をしようと持ち掛けてきたのです。
とても驚きましたが、先輩たちのことも知っていたのと、本当に付き合うわけではないということで、ふたつ返事でOKしてしまいました。簡単にいえば「疑似恋愛」です。
実際にやることは毎日のようにメールしたり、休み時間におしゃべりしたり、せいぜい手をつないだりと友人同士のときとやっていることはあまり変わりません。
それでも、僕は友人のときから彼女を「かわいいなぁ」と思っていたので、ごっこ遊びでも付き合っているのだと思うとドキドキしていて。いつの間にか、彼女のことを遊びではなく本当に好きになっていたのです。
それでもすぐに打ち明けはせず、しばらくは「恋人ごっこ」を継続。「好き」という気持ちも次第に自分のなかで明確になってきて、いわずにはいられなくなりました。
我慢ができなくなった僕は、彼女に告白しようと思い立ちます。女の子を真剣に好きになるのも、ましてや付き合ったこともありませんでしたが、悩むよりも好きな気持ちが勝ってしまっていたのです。
でも面と向かってはやっぱり恥ずかしい。そう思って、「何といったら付き合ってくれるだろう」とうんうん唸りながらメールを打ちました。「同性を好き」ということよりも「僕が彼女を好き」という気持ちのほうが大きかったような気がします。
幸いにも彼女からの返事はOK。あとから聞いたのですが、彼女も同性を好きになったことはないけれど、告白されたときに自然とガッツポーズをするくらいには僕のことを好きだったそうです。僕以外なら女性とは付き合わないと思う、ともいっていました。
くっついたり、離れたり
多感で成長途中である学生同士の恋愛は、どんなに熱烈に始まる恋でも、なかなか長続きしない場合も多いと思います。好きという想いに勢いがあるからこそ、衝突したり、気持ちが行き違ってしまったり…。僕らも当時ご多分に漏れず、交際を長続きせることができませんでした。
別れた理由はそのときどきですが、別れるに至る際には毎度それなりのケンカを経て、別れたりやり直したりを何度も繰り返していました。
その関係を繰り返していた大きな理由は、いつも僕にまっすぐに彼女が向き合ってくれていたからです。たとえば僕が何かうまくいかないことがあって不貞腐れてしまっても、彼女はいつも真正面から、誰よりも僕のことを真剣に考えて向き合ってくれました。
それは別れて友人として過ごしているときも、何も変わらなかった。彼女のその性格は、一緒にいて安心感があり好きで、やり直していました。
あまりにもまっすぐなその態度は、ときに若い自分には後ろめたく感じることも少なくなく、向き合うことがこわくなり目を背けてしまったことが何度もあります。恋人としても、友人としても僕のためを思っていてくれる。加えて趣味もよくあったので恋人ではない期間でも、一緒にライブやイベントに行ったりと、絶えず関係が続いていました。
この「別れて、また付き合って…」という関係は、大学在学中まで続きます。