取材日は、2019年ももうすぐ4月のころ。日本はだんだんと暖かくなり、春もひょっこりと顔をのぞかせる頃合いです。しかし、この時期のイギリスはまだ春の陽気とはほど遠く、メグミさん(仮名)はお気に入りのコートのポケットに手を入れながら街を歩いていると、イギリス人の彼女のことを思い出すのだとか。
メグミさん(以下・メ):某大手商社に勤める30代・女性。シンガポール駐在時に海南風チキンライスにはまり、休日は都内で調味料を探すことにハマっている。趣味は読書とサルサダンス。
ライター赤池(以下・赤):ドイツに移住したいと考えている20代女性。チキンライスと聞くとケチャップの方のチキンライスを思い浮かべるタイプ。
イースターの時期に友人の誕生日パーティーで出会った
出会いは、とある友人の誕生日パーティー。彼女は私より年上で同じ大学の大学院に通う、大人で知的な女性。そんな彼女に一目惚れしたのが、いまから十数年前の3月だった。
メ:当時、イギリスの某大学に通っていた私は大学2年生。イギリスは毎年3月になるとイースター休暇があり、ちょうどそのころも約3週間ほどのバケーションの時期でした。
赤:イースター休暇ってなんですか?
メ:イースターっていうのは、イエス・キリストが復活した日のことで、十字架に架けられたキリストが3日目に復活したことを由来としているそうです。イギリスではとても重要な日とされていて、その前後は日本でいう春休みのような期間になります。
赤:なるほど。そういえば近年日本でも春になるとイースター関連のイベントが開かれていますね。
メ:イギリスではイースターエッグという卵のかたちをしたチョコレートや、ホットクロスバンという十字にアイシングがかかったパンなど、復活に関係した食べ物がお店にたくさん並びます。そのイースターエッグを庭に隠して子どもたちが探すエッグハントという遊びもあったりしますね。大学生にもなると、周りのヨーロッパ出身の学生はこの時期に帰省して家族と過ごしたりしていました。
赤:メグミさんもその時期は日本に帰省したんですか?
メ:いえ、私は帰国せず住んでいた学生寮にいました。特にやることもないし、新学期に備えて勉強していたと思います。そしたら「メグ、暇ならパーティーにおいでよ」って、友人から誕生日パーティーに誘われたんです。パーティーといってもやることはたいてい決まっていて、みんなでお酒を持ち寄って家飲みです。それで酔っ払ったらナイトクラブへ行くっていうのがお決まりのコースでしたね。
赤:日本の学生はパーティーのような規模になると居酒屋に集まって飲むことが多いかと思いますが、イギリスの学生は家飲みなんですね。
メ:そうですね。イギリスって24時間空いているお店が少なくて、夜中でも空いているのはナイトクラブくらいなんですよ。でもクラブでお酒を買うと高いから、なるべく酒代を浮かすために誰かの家で飲んで、酔ったらタクシーでクラブへって感じでした。
赤:たしかに、タクシーでもみんなで割り勘したら安いですもんね。
メ:これはイギリスの学生あるあるだと思います。でも、私がそのとき行った誕生日パーティは違いました。
赤:…というと?なんだか胸がザワザワしてきました…。
メ:忘れもしない、リサ(仮名)と出会ったんです。彼女は、私が初めて付き合った外国人女性でした。私は男性も女性も性別関係なく、魅力的だと思った人を愛すバイセクシャルなのですが、そのとき出会ったリサは、女性を愛するレズビアンでした。